一度は力なくベッドに寝ていたけれど、
探しているうちに、夜を迎える。
父さんはそれでも満足そうに、安らかに目をつむった。
今まで分からなかったけど、ほんとはいつも、そうやって泣きそうだったんだね。
さっきまで父さんが寝ていた、広いベッドに背中を向けて眠る母さん。
翌日。
心配になって、朝一番から実家の様子を見に行く。
「あ、ティール君か。これね、あなたが結婚した後にグェンダル君からもらったの。綺麗な指輪よね…」
「うん。キレイだね。」
「ふふ。グェンダル君、お給料少ないのに無理しちゃってね…」
「母さん。嬉しそう。」
母さんは自分ではわかってないと思うけど、幾つになっても少女みたいなところがある。
(だからみんな、心配してるんだよ)
朝、2の刻。
お父さんに、さようならを、言おうとしたら、母さんが静かに首を横に振っていた。
「ガノスに行けば会えるのよ。さよならじゃないの。」
神職らしいというか、自分の高齢さを感じ取って言ってるのか…。
「ふふ。なんてね、負け惜しみよ。大事な奥さんを、置いてっちゃうなんて、ホントにひどい人。」
ゆっくり、のんびり、俺たちを育ててくれた両親は、きっと、たくさんの思い出でこれからも繋がってる。