手元に無いもどかしさ | 『泣きながら歯磨き』

手元に無いもどかしさ

神さま仏さまに「そなたは、なぜ生きておるのか?」と問われれば、「立ち読みをするためでございます」と答えるくらい立ち読みが好きです。
立ち読み好きが高じて、よく行く本屋の小説を、もうすぐ読破しそうです。
その小説は、小説コーナーの片隅に一冊だけしか置いておらず、俺は「買うべきか、買わざるべきか」と悩みながら半年ほど立ち読みを続けておりました。
そして、いよいよあと数ページで読破というしだいでございます。
その小説は、いつもそこにあり、誰も手にとらない面白い小説です。
その小説には、本自体にしおりの役目をする緑色の紐が付いています。
緑色の紐を引っ張りながら本を開くと、俺が前回読んだところまでのページが開きます。
なぜなら、いつもそこにあり、誰も手にとらない面白い小説だからです。

タダ読みしてしまって、著者や本屋さんに申し訳ないなあ、などと思いつつも、俺の財布の紐は固く結ばれたままなのでありました。
ああ、でも誰かに買われてしまったらどうしよう。