五十年松よ | 『泣きながら歯磨き』

五十年松よ

俺は、お金をあまり持っていません。
しかし、まったく持っていないというわけではありません。
多少は持っています。
それでも、全国資産ランキングがあったとして、それが発表されたとしたら、きっと下位に食い込むことは確実です。
その程度のお金しか持っていません。
だから、たまに『青空文庫』で著作権の切れた本を読むことがあります。
タダで読めるからです。
タダで本が読めるなら、お金をいくら出してもかまいません。
それくらい「タダ」が好きです俺は。

先日『畜犬談』という小説を読みました。
太宰なんたらという人の書いた物で、犬好きには怒りを与え、犬嫌いには恐怖を与えてしまいそうな話でした。
この話の語り手である「私」は、犬に対する愛が一切なく、臆病で、思い込みが激しく、滑稽極まりない屁理屈を垂れ流すひどい男です。
が、悪人ではありませんでした。
とても情が厚い男なのです。
純粋な悪人なんてそうそう居ないもんだなあと思いました。


あと『畜犬談』では、冒頭で犬は獰猛な猛獣である、とこれでもかと説明するのですが、なぜか俺は、女が怖くなりました。