上京して2年。

田舎モノの私でもおいしい情報を持てるようになってきた。


ので、備忘録的にしたためます。

初めて唇を重ねたのは年の瀬だった。

お台場のヒトによって作り上げられた海辺に寝転がっていた。

風が泣くのをやめてくれたおかげで、寒さに震えることもなかった。


だれもいない静かな浜辺。


砂浜の上に彼はあぐらをかき、その上にちょこんと私をのせた。
これ以上ないぐらい近しい距離。

彼の方に腕を回し、ぎゅっとしがみつくと彼もぎゅっと返してくれる。
波のような抱擁だった。


そして、初めてくちびるを重ねた。
やわらかくてあたたかかった。
まわりが軽くなった気がした。


彼女のもとになんて、返したくなかった。

合コンで知り合ってから、私の資格試験一週間前を除き、
毎週二人でご飯を食べるようになった。

試験前には毎日のよう励ましのメールが送られてきた。


「もうちょっとだから・・・」
「今日、神社に祈願してきたから」
「がんばれ!」


頑張れという言葉は私の前に積み重なりすぎて、うんざりもしていた。
だけど、覚えていてくれていることがうれしかった。
私の存在を。


試験がなんとか終わり、変わらず毎週会った。
映画、芝居、美術館。

手をつなぎ、いろんなところへ行った。

クリスマス時期には色づいた横浜へも行った。
でも、あたしは23日のオンナだった。


当然、彼の24日は彼女とのデートにあてられていた。

次に彼と会ったのは翌週だった。

そのときもまた、同じ、町で、ご飯を食べた。私が、暮らす、町で。


私の誕生日が近かったこともあり、お祝いをしようと、彼が誘ってきた。


この時点で私はきっと彼が好きだったと思う。

苦しくてたまらなくなるから、今も認めたくないけれど。


あの時冗談にからめ、「早く別れないんですか」と私は言った。

彼は答える。「別れないよ」と。


冗談の中に、私は自分の嘆きを包み隠した。


お店を出ると容赦なく寒風が吹きすさんだ。

「寒い寒い」と言い、背中を丸める私を、彼が、包み込んでくれた。

あったたかさよりも恥ずかしさがにじんでいた。

友達から、彼女がいることはチラリと聞いていた。

まさか同棲までしているなんて。


別れ際に、私はだだをこねるような甘え方をした。

彼は、「何を甘えているんだよ」と私の頭をなでた。


前の5歳上の人以外にこんな甘え方をしたのは初めてで、

自分でも驚いた。


そして甘えた自分と、頭をなでてくれたその感覚は

妙に生々しく私の胸をとらえ、いつまでも残っていた。

合コンのあった週から二週間後の平日に、待ち合わせをした。


待ち合わせ場所にたどり着くと既に彼はいた。

時間にきっちりした人なんだというのが第一印象だった。


あてどもなく歩き回り、隠れ家的焼き鳥屋ののれんをくぐった。

友達のこと、合コンのこと、楽しく話は広がっていく。

私はわくわくしていた。無邪気に見せようとしていた。


次は皆で何をしよう。鍋がいいんじゃない。

誰の家がいいだろうという話になったとき、晴天の霹靂は起きた。


「僕の家は広いんですよ。60平米ぐらいある」

「おおおー。広い。なんでそんなに広いの」

「なんでかというと、同棲しているからなんです」


頭から冷水を浴びせかけられた気分だった。


メールが舞い込んできた。

合コンの翌々日だった。


「来週あたり、美食アカデミーを開催しましょうよ」と。


特に何も思わなかった。

彼に対して、好意も、気になるという感情も持ち合わせていなかったから。



10歳年上の彼との出会い。

それは、10月終わりに訪れた新宿の雑踏の中だった。


友達とその彼主催による合コン。

3対3。


その中に彼はいた。

人見知りがちな私だけど、何を言っても怒ることのなさそうな彼の雰囲気により、

いつものわがままな振る舞いを、完膚なきまで叩きのめす毒舌を披露できた。


あの日の晩のことは、ただ楽しかったなという印象を残すのみで、

なにを話したのか、どう思ったのかひとかけらも覚えていない。


去年の今頃。

わたしは略奪愛に心をとがらせていた。


相手はひとまわり年上の既婚者だった。


その人と、手をつないだことはあれど、

唇を、体を、重ねることはなかった。

不倫に陥ることだけは、自分でも許すことが出来ない。

出来なかったからだ。


それから、私は5歳年上の独身男と真剣な恋をつむいだ。

しかし、別れは突然訪れる。

社内恋愛のなれのはて、別れを選ばざるを得なくなった。


そして今。

私はふたたび略奪愛に心をとぎらせている。


今度の相手は、10歳年上の独身男。

ただし、彼には同棲中の彼女がいる。

きっと今年あたり、籍を、入れる、のだろう。