1 決められた行動


オレは家から飛び出し、12月の夜を走りぬいた。
風を切り裂きながら走れたのはものの15秒程度だったが
すぐに地元の駅にたどり着いた。

オレは嫌な事があると、こうして家から飛び出し
電車に乗り、どっかの街へ行きたがる。
見知らぬ人だけの街だと、歩きながら嫌なことをじっくりと考えられるからだ。
この方法をやれば自然と解決方法が出てきていた。
だから自分では悩みを解決する良い手だと思っている。


そして今回、また嫌なことがあった。
彼女とケンカしたのである。

理由は"オレが約束を破った” ・・・ありがちな話である。
電話をかけられて話すと同時に、すぐさま相手の怒りが伝わってきた。
マシンガンのように罵声を浴びせてくる彼女。(しかもあの言葉は女の使う言葉ではなかった)
反射的に負けじとオレも怒り返した。
お互いが譲らずにケンカを続ければすぐには止まらない。
だが、30分くらいケンカを続けると、さすがにお互い疲れきった。
オレは「もういいや、今日は切るわ」と言う。
彼女も「あっそ。じゃあ切れば?」
だからオレはすぐに切ってやった。
最後に良くない意地が出てしまった。

"コレ”はオレの良くない癖だった。
小学生時からケンカをすると「マジで殴るぞ?」と口で言って、
相手が「殴ってみろよ」と同意を得ると、本当に殴って先生に怒られていた。
それがケースは違うけれど、中学、高校と続いていた。
自分でも悪いと分かっているが、
熱くなっているときにそんな落ち着いてなんかいられない。
口約束を結んで一発ぶん殴ってこのイライラを解消したかった。
しかし、カッとなってやった時は満足感があるが、
その後は後悔し、自己嫌悪に陥るのが"お約束”だった。

今回も口約束で電話を切った。それは簡単だ。
だが、話をちゃんと出来なかったという後悔が
電話を切り、振り返ったときに押し寄せる。
「ああ・・・またやっちまった・・・か・・・」
ついつい独り言を言ってしまい苦笑いを浮かべる。

そして無音の部屋でイスに座り考えこむ。
「何で言ったコトを本当にやっちまうんだろう・・・」
小さい頃から何回も同じことを繰り返す自分にウンザリしていた。
もはや自己嫌悪に陥り始めていた。
こうなると手がつけられないのを自分で分かっていた。
今までの行動に自信が持てなくなり、自分のレベルの低さに失望する・・・
「・・・・・・ダメだ。家だと暗くなるな・・・あの"いつもの方法”でもやるか」
そう言って、この気持ちを和らげるべく、
自宅から駅前までダッシュしたのだった。


・・・オレは駅前の電車路線図を見ていた
京浜の駅だったので、池袋に行き、乗り換えれば大体どこにでも行ける。
「さてと・・・今日はどこに行こうか?」
チャージには2000円余りが入っていた。
どんなに遠くても都内なら行って帰れる金額だ。
そこには安心したが、逆に財布には7,800円しか入っていなかった。
少しチャージし過ぎていた様だ。

「ちっ・・・金はねぇ・・・か・・・。まあ久しぶりに渋谷にでも行くかな。
この間は新宿だったし。」
そう決めたとき、着始めていた電車に気づいた。
慌てて走り、その電車に乗り込むのであった・・・





  2 異空間

ギリギリ滑り込めたのは良かったが、
せっかく整われていた呼吸がまた激しく動き出した。
この短い距離でも、間に合うかの緊張も合わさったのだろう。
周りにゼエゼエと呼吸しているのを見られると恥ずかしいので、
バレない様に電車内を見渡すと、
運よくオレは一番右端の席に座れた。
夜で都心行きだったからかも知れない。
安堵感を感じつつも、すぐに息を整え始めた。
やっとの思いで整え終わると、左隣にいる人に気がつく。





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