たぶん大学の入学式。

付き添いのおかあさんらしい女性と

黒スーツに黒パンプスで

緊張した面持ちの若い女の子。


指定券が必要な電車に

間違えて乗ってしまったらしく

皆座ってるのに立っていて

通りがかった車掌さんに

声を掛けられていた。


色々調べてから

乗ったつもりなんですけど。

よくわからなくて。。。

すみません。。悲しい


恐縮しながら

おかあさんが2人分の料金を払う。


車掌さんは

お金を受け取りながら


今日はどちらまで

いらっしゃいますか?


と聞く。


おかあさんが

少し不思議そうな顔で

スマホで調べた乗換案内の

画面を見せたら


あー、このルートは

乗換駅がすごく混んでて

わかりにくいので

違うルートがいいですよ!


若い車掌さんは

親切にゆっくり丁寧に

駅名の漢字まで説明しながら

他社線への乗換ルートを

説明してあげていた。


おかあさんは


助かりました。

ご親切にありがとうございました。


と、ほっとして頭を下げていらした。

女の子は無表情で黙って

おかあさんと車掌さんのやりとりを

じっと聞いていた。


この時期

駅は右往左往する人たちで

いっぱい。


私も30年ぐらい前に

転勤してきたときは

満員電車に面食らった。


車輌のどの位置に

乗るのが正解なのか

わかるまで時間がかかった。


満員で

降りたい駅で降りられず

次の駅まで乗ったことさえある。


今みたいにGoogleMAPも

乗換案内もなかった。

路線図見ながらの

乗換は必死だった。


本当に困ってるときって

自分から人に訊ねるのは

すごく勇気がいる。


なかなか自分からは

聞けないんだよね。。。


車掌さん

本当に優しかったな。


おかあさんが車掌さんに

質問したならともかく

車掌さんから聞き出して

説明してあげるなんて。


すごいな。

あたたかいな。


ここからは私の

勝手な想像だけれど


たぶん地元からやってきた

女の子はこれから一人暮らし。


ずっと無表情で無言だったのは

指定席だけのシーンとした車内。

恥ずかしかったり

緊張してたからじゃないかな。


入学式に付き添う

おかあさんが地元に帰っちゃったら

きっと一人で心細いだろうな。


でも一番緊張していたときに

車掌さんに優しくしてもらったこと

親切にしてもらったことは

きっとずっとお守りのように

彼女の心を温める。


今日の出来事が

これから自分が暮らす場所は

悪いとこじゃないって

思える理由のひとつになるといいな。


おかあさんを追って

電車を足早に降りていく

彼女の背中に


良かったね。

頑張って!


と心の中でエールを送った。