実家に帰ると必ず会う人がいる。
私が中学のときに
付き合っていた人の、親友。
彼氏と別れた後も
その男友達との付き合いだけが残った。
かれこれ40年以上になる。
旦那と息子も公認の
男友達だ。
会うときは必ずランチで。
お酒を飲めない男友達は
私だけにワインやビールを勧める。
美味しいものを食べて
よもやま話をして
食事の後にコーヒーを飲んで
奢ってもらって
じゃあ、また
うん、じゃあまたね
と店の前で別れる。
会うのは年に1、2回だったのが
最近私が、父の介護サポートで
実家にたびたび帰るので
今は、ふた月に1度ぐらい会っている。
最近の話題は、
もっぱら親の介護だ。
彼は一人っ子で結婚してなくて
ふた親をたったひとりで
既に見送っている。
お母様はかなり早く亡くなり
そしてお父様は亡くなって
まだ1年ちょっとだ。
私が初めての親の介護で
右往左往している話に
先輩ヅラする訳でもなく
俺の親父の時はこうしたかなー
と、さりげなくアドバイスをくれる。
私の両親とも
何度か会ったことがあるので
あー、お前の親だったら
こうした方がいいかもしれないね
とか、言ってくれるのも
嬉しい。助かる。
ずっと前に
実家のエリアで地震が起こり
電話しても繋がらず
離れた場所で暮らす私が
両親が無事か焦って動揺していたときに
俺が様子を、見にいってくるよ
とメールをくれて
実家の近くまで
わざわざ歩いて行ってくれて
両親の無事を知らせてくれた。
そんな彼は
自分の父親の介護の期間に
会ってもその話を私にしなかった。
私の馬鹿話や仕事の愚痴を
いつものように笑って聞いていた。
だから私は彼がひとりで
介護に向き合ってたことを
全く知らず
一昨年の暮れの喪中はがきで
彼のお父様が亡くなられていたことを
知ったのだ。
言ってくれたら
良かったのに！
と、なじる私に
彼はただ黙って笑ってた。
父の介護を
部分的×期間限定で
少しサポートするだけでも
これは大変だな。。。と思う。
でも私には母も妹もいて
分担しながら
悩みを分かち合いながら
やっていける。
彼は頑張ったんだな。
ひとりで。
今日は、彼と一緒に
ステーキとカキフライの
ガッツリランチ。
俺らも、もうじき還暦よ。
こーゆーの食べられるのも
今のうちかもしれないね
と言いながら2人で完食し
いつものように笑顔で
レストランの前で手を振って
お父さんの介護、
無理しないように。
お母さんにもそう言ってね。
根詰めないようにねって
最後にそう言った。
あなたこそ
一人暮らしなんだから
体大事にね。
また会おうね。
そう言いたかったけど
へたれな私は
心の中でしか言えずに
黙って笑顔で手を振った。