注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。32
〜 Leak out ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
京介くんとマネージャーたちの奔走により、熱愛詐称のひと騒動が終わったと思われた頃。
突然のお話に私は驚きの声をあげた。
「えっ、私も?」
「そう! あゆちゃんも一緒に!」
お仕事で3週間ほど南の島へ行くという彼ら、なんと、私も同行することになったらしいのだ。
なぜ私も…の問いに、サポートスタッフとして来てほしい、と。
つまり向こうでもご飯を作ったり洗濯したりの家事をしろということだ。
ま、彼ら全員が行くのなら断る理由もないし、時期的に忙しいだろうと思われるはずの他の仕事も何故か人手が足りてるということで承諾する。
それから別のお仕事の調整やら事前準備をこなしているうちにあっという間に時間は過ぎて出発の日がやってきた。
今日出発するのはメンバーたちとチーフさん、翔くんのサブマネさん、それから私とスタプロの映像担当部署から2人なんだとか。
ちなみに、全期間常駐するのはメンバーたちと私のみで、他の人たちは業務の都合上、東京とこの島を行ったり来たりするらしい。
……大変だな。
片道数時間なんだもん。
で、今日はチーフさんを除く私たち4人はWaveのみんなとは別の便で行くことになっている。
そして私の隣に座ったのは。
「…」
映像担当部署に籍を置くカメラアシスタントの人らしい。
座るときにぺこりと頭を下げた後はずーっと無言だった。
同じサポートスタッフだからと一応あれこれと声をかけてみたけれど、「はい」とか「まぁ…」とかいう簡単な言葉しか返ってこなかった。
カメラマンって撮影の時に被写体モデルが機嫌を損ねずに気持ちよくポーズを取ってくれるようにとあれこれ声を掛けるっていうイメージがあって、話好きな人が多いのかと勝手に思っていたのだけれど。
それって偏見だったのかな?
それとも、人見知り?
もしくは、私がキライとか!
……なーんて。
話は跳躍してしまったけれど、知らない人に嫌われるという特技は持ってない……はず。
暖簾に腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏…といった状態だったから話は続かず、私も2つ3つの話題を振って以降、それ以上は黙っていた。
そんなこんなで東京の羽田空港を出て数時間後、私たちは亜熱帯に属する南のとある島へとたどり着く。
東京にいる時はまだ少し寒くて厚着をしていたけれど、今は半袖シャツになっても構わないくらいの陽気で同じ日本とは思えない気候だ。
迎えに来たマイクロバスに乗るために空港の建屋から外に出ると、南の島特有の植物たちが何処までも続く塀のようになっているのが目に入った。
それから三十分ほど車に揺られて、空港から離れた場所にある小ぢんまりとしたリゾートホテルに到着。
突き抜けるような青い空に活き活きとした植物の緑とハイビスカスの赤、それから人工的構造物である建物の白とこれまたこの地域特有のテラコッタカラーが映えて色鮮やかだ。
その景色に見惚れていると、一緒に来た人たちは先にフロントへと向かっていた。
慌ててその後を追い、私もチェックインしようとすると。
「姫榊さま…? 既にチェックインされてますが」
「……はい?」
一体どういうこと?
私、いま来たばかりなんですが??
きょろきょろと辺りを見回して、サブマネさんに声を掛けるも何も知らないそうで。
フロントの方も困惑してらして。
さてどうしたものか…、と考えていたら不意に後ろから声を掛けられた。
「愛優香さん」
「うわっ。
…って、チーフさん??」
「フロントに荷物を預けて、一緒に来てちょうだい。 ああ、念の為に荷物にはロック掛けといてね」
「え? あ、はい、分かりました…?」
何がなんだか分からないけど、とりあえず彼女の言葉に従って大きな荷物を預け、その後に付いていくことに。
ホテルのエントランスホールを通り抜け、眼の前に止まっていた電動カートに乗ってしばらく揺られて行くと、いくつかの建物が点在するエリアに来た。
ここもホテル敷地内であり、自宅に居るときと同じように過ごすためのプライベート重視型コテージエリアだという。
それぞれの建物の間には遮蔽となるような植え込みがあったり、また、カート用道路から離れた傾斜地に建っていたりするためにプライバシーはそこそこ保たれているのだとか。
小さなコテージを幾つか過ぎた後、ある一つの大きなヴィラに到着する。
と。
「あーちゃん! おつかれ!」
その玄関から飛び出してきたのは亮太くんだ。
どうやらここが彼らの寝泊まりする場所らしい。
「あれ? 荷物これだけ?」
「チーフさんがフロントにって言うから預けてきた」
「ふーん? 後から持ってきてくれるのかな?」
「愛優香さんの部屋は本館よ」
「え、なんで?!」
「さ、ミーティング始めるわよ」
亮太くんの質問に答えずにスタスタと歩いていくチーフさんの後を追って私たちも建物の中に入っていく。
エントランスホールに接するとてもとても広いリビングルームの左手側にはガラスのテーブルと何人でも座れそうなソファ、それから右手側には大きなダイニングテーブルが配置されていて。
そして、その先にある全面ガラス張りのテラス窓からは見えたのは。
「うわぁ」
そんな声が出るほどのステキな景色。
シックな黒紅色のウッドデッキの向こうに見えるのはインフィニティプール、さらにその向こうには象牙色の砂浜と天色の空、そして瑠璃色の海が。
空と海は、気のせいかもだけど、東京で見るのとは違うように感じる。
いつもとは違うこんな非日常的な空間の中で、彼らは更にその感性を磨くんだろうな。
芸術的センスのない私からすれば、とても羨ましいと思うのだった。
〜 to be continued 〜