注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。番外編
〜 HappyBirthday 2024 中西京介~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
20XX年4月13日午後10時―――。
「ごちそうさまでしたー」
「はい、お粗末さまでした」
食事を終えた彼らが食器を乗せたトレーをカウンターキッチンの向こう側から持ってくる。
私はそのこちら側で受け取り、お皿に残ったソースなどを拭き取って洗剤入りの水を張った洗い桶の中に重ねていった。
「あーちゃん、明日、どこに行くか決まった?」
「えっ、あの、えーっと…」
含み笑いをする亮太くんの突然の問い掛けにしどろもどろになってしまった。
明日は彼らのメンバーの一人、中西京介くんの誕生日である。
その彼とは、先日、恋人の関係になったばかりだった。
私のほうが年上で尚且ついわゆる結婚適齢期を過ぎているために、次のお付き合いは結婚を前提としたものにしたいからと固辞したものの。
当然それは考慮の上でと真剣にアプローチされたのだ。
「あれ? あゆちゃん、明日はお休み取ってた?」
「あ、うん」
「偶然! 俺もオフだよ!! どっか行こーよ」
「翔ちゃん、明日は邪魔しちゃダメだってば」
「なんで?」
「だって明日は」
「―――オレの誕生日だし」
ムスッとした表情で会話に割り入ってきたのは京介くんだ。
「おかえりなさい」
「ただいま。
明日だけじゃなくてこれから先ずっと邪魔すんな。
つか、お前らメシ食い終わったんなら早く帰れ」
「えー、ここ共同スペースじゃんー」
「あゆちゃんの独り占め反対!」
シッシッと追い払うかのように手を振る彼に対して亮太くんと翔くんが抗議する。
ここ最近のいつもながらのその様子に苦笑いしながら、私は京介くんの夕食の準備を始めた。
ハーブソルトを揉み込んでおいた鶏ももの一枚肉を冷蔵庫から取り出し、オリーブオイルを熱してフライパンで香草と一緒に焼くと、ふわりとローズマリーとオレガノの香りが立ってくる。
皮に焼き色が付いたらひっくり返し、少しずらすようにフライパンの蓋をして半蒸し焼きにすれば完成だ。
油を落としたら食べやすいようにカットし、ポテサラなどの付け合わせを添えて、ご飯やスープなどと一緒にトレイに乗せた。
「いくらあーちゃんといい仲になったとは言えさー、共同スペースで公私混同は良くないと思うんだよねぇ、ボク」
「いい年してネコ被んな」
「あっ、ひど!」
「はいはい、そのあたりで。
翔くん、亮太くん、マサラチャイ飲む?」
「うん、飲みた―――」
「今日はいいや。 馬に蹴られる前に部屋に戻るね。 おやすみー。
翔ちゃんも行くよ!」
「えーーー!」
亮太くんは翔くんの首根っこを捕まえ、不満げな声をあげる彼を引っ張っていく。
玄関ドアが閉まる音が聞こえて、京介くんが溜め息をついた。
「やっと静かになった」
「もー、そんなこと言わないの」
ふふ…と笑いながら、淹れたてのチャイが入ったカップを持って彼の真向かいに座る。
キレイな所作で夕食を摂る京介くんをチラ見しつつ、私は買ってきたお出かけムック本を捲っていた。
恋人関係になって初めてのお出かけが彼の誕生日を祝うためのものとなり、まかせて!と言ったものの何だかミッション度が爆上がりしたような気がして行き先がなかなか決まらない。
オーソドックスなデートコースも考えたけれど、これまでにアチコチに行ったであろう彼が楽しんでくれるかどうかを考えると中々決まらなくて。
何度もページを行ったり来たりしていると京介くんは不意に言った。
「そんなに悩まなくても」
「悩むわよー。 せっかくなんだから思い出に残るところの方がいいじゃない」
「オレ、愛優香と一日中ベッドの中でも思い出として残るんだけどなー」
「!!」
なんてことを言うんだ、この人は!
そのヒトコトに不覚にも心を鷲掴みにされてしまって。
私は顔を赤くするしかなかった…。
それから小一時間が経って。
京介くんが食後のチャイを飲んでいる間に洗い物を片そうとシンクの前に立つと、彼は飲んでる途中のカップを持ってこちら側にやってきた。
「ゆっくりしていればいいのに」
「んー、早くイチャつきたいから手伝う」
「!」
本日、2度めの不覚。
甘い言葉を口にされることに慣れなくて、ついドギマギしてしまう。
さらに…。
―――“ちゅ”。
「!!!!!」
頭を固定されたかと思うと頬に不意打ちのキス。
思わず持っていたお皿を手放してしまい、あわや落ちるというところで京介くんがキャッチした。
「―――もうっ! 危ないでしょ?!」
「ねー、危ないねー」
「なに他人事みたいに言ってんの!」
少しキツめに言ったにもかかわらず、開き直ったのかそれを意に介さないとばかりに京介くんはこれでもかというほどキスの雨を降らしてくる。
それから時折り甘く囁かれる《愛してる》の言葉。
こんな風に愛情を表わされたことなんてなかったから戸惑うばかり。
でもこの時間が心地よくて、思わず身を委ねそうになるけれど…。
「きょ、京介くん、片付け…」
「―――ごめん、マジで止められないや」
「え…」
「ホント、ごめん」
そう言って私を抱き上げ、彼は寝室へと歩を進める。
ベッドに優しく降ろされてから始まった甘く淫靡な時間は、私が気を失うまで続くのだった―――。
〜 end 〜