創作◆驟雨-shower rain- Ⅳ −藤崎義人ルート−④★ダーリンは芸能人・二次創作小説 | 二次元のカレに逃避中♪

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このお話は、諸般の理由によりアメブロでの公開を控えている『驟雨-shower rain-』(夢小説HP・上弦の月の影の中で★ANNEXにて掲載)第4章以降の藤崎義人ルートとなります。

『淡雪』に出てきた人間関係とはかなり違いがありますがご了承下さいませ(汗)



驟雨-shower rain- Ⅳ −藤崎義人ルート−④

《ダーリンは芸能人》二次創作小説





「おにいさま? ねぇ、どうしたの?」


「しどうよしの」と名乗った女の子が戸惑う声音でそう尋ねる。

その名前から推測出来るのは、この子はオレと海尋の…。


 「……顔を上げてくださいな」

「…はい」


見知らぬ人間からの突然のお願いに少し戸惑った様子を見せながらも、その老婦人は微笑みを浮かべていた。

―――たぶん、この人はオレがこの子の父親だと気付いてる。

さっき初めて会ったときのあの驚愕した表情がそれを物語っていたのだ。


「海尋と会ってどうするおつもりですか?」


笑みを浮かべてそう尋ねる老婦人の声音が少し厳しいものになった気がした。

オレと会うことで彼女にどんな影響を与えるのかと警戒しているのだろうか。

海尋に対するオレの立ち位置を見定めようとしているのだろうか。


「……彼女がいま幸せかどうかを知りたい…んです」

「私たちが大切に守っていますよ」


守っている…?

それイコール海尋が幸せであるという同義語だと考えられるのか?

いや、幸せかどうかを尋ねているのにこの返答は?

そしてオレ自身ももう一度自らに尋ねる。

海尋に会えたとしてオレはどうしたいのか。

―――すぐには答はでなかった。

彼女を忘れられなかったのは確かだ。

何かをするにしても彼女とだったら…彼女なら…と、すぐに考えてしまう自分がいた。

だから何も考えることがないように仕事に打ち込むようになっていった。

そんな時間が長かったからか、すぐには答えは出なかった…。

答えに窮して沈黙が続いていたその時、湖を渡った風が強く吹き、女の子のワンピースの裾を揺らした。


「きゃ…っ」

「…よしの、帰りましょうか」

「大おばあさま、あの…」

「ちゃんとおにいさまをお連れしてね」

「! はい!!

 おにいさま、こっちです!」


満面の笑顔でオレの手を取った少女―――よしのは嬉しそうに歩き出した。

しばらく歩いて林の遊歩道の終点らしき開けた場所に大きな黒塗りのリムジンが停まっていた。

そのドアの脇に立っていた年配の執事服の男性が老婦人を認めると同時に頭を下げ、車のドアを開ける。

上品な身のこなしで車に乗った老婦人のあとから、淑乃とオレは続いた。

そこから十数分ほど走っただろうか。

車は大きな門をくぐり、大きな屋敷の車寄せに停まった。

乗ったときと同じように、外から執事服の男性が車のドアを開けてオレたちの降車を促す。

老婦人の後から続いて屋敷のエントランスホールに入るが、その広さや天井の高さに驚きを隠せなかった。

ここに連れてこられた時のリムジンといい、執事が居ることといい。

よしのは老婦人を『大おばあさま』と呼び、二人が着ている服もかなり上質なものに見えた。

かなり裕福な、というより、いわゆる上流階級に属する人たちのように思える。

ハッキリ言って、知っている限りの海尋とは結び付かず、本当に彼女と関係しているのかと不思議に思う自分がいる。

ただ、この老婦人の口から零れたのは紛れもなく彼女の名前で、ああいう質問もしてきたのだからやはりここにいるのは間違いがないだろう。


「少しの間だけよしのは自分の部屋に行ってなさい」

「えっ、どうして?! 私も一緒に」

「おにいさまと少しお話があるのよ」


有無を言わさず、抵抗さえ赦さないという雰囲気で老婦人にそう言われた彼女は、不満顔で、だけど聞き分けよく自分の部屋へと向かった。


「こちらですよ」


先導されて辿り着いたのは、アラベスク模様が描かれた扉の前。

その扉が開くと風が緩やかに吹き抜けていく。

老婦人の後に続いて入った部屋はとても明るかった。

硝子張りのサンルームから入ってくる、秋の穏やかな陽の光が部屋全体を照らしているのだ。

それと同時に、外からの風をはらんた薄衣のカーテンがふわりひらりと揺れてはためいている。

そしてそこに居たのは……忘れることが出来なかった愛しい人。

ギリシャ神話の女神たちがその身に纏うようなシフォン生地の白いナイトドレスを着た女性が―――海尋がいたのだ。



〜 to be continued 〜