注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
これまた過去の下書きから引っ張り出してきました😁
日付は2018/11、まぁ、割りと最近のヤツ?
それでも4年は経ってるー(ノД`)シクシク
初の一般人ヒロインです。
あなたと始める物語は。①
★
《ダーリンは芸能人》二次創作小説
春の便りが届き始めた3月。
休日出勤を終えたその帰りに会社近くのフラワーショップ〈フローリストKM〉に立ち寄り、その軒先で部屋に飾るための花を眺めていた。
「愛優香さん、こんにちは。 今日は自宅用っすか?」
そう声を掛けてくれたのは、いつも接客してくれるアルバイト店員の男の子、七宮清翔くん。
見た目はイマドキの大学生なんだけど、人当たりがよくてなかなかのしっかり者だ。
初めてこのお店を利用したのは1年前。
それから1~2週間に一度訪れてるからかすっかり顔なじみになり、たまたま会社で使うアレンジメントをお願いしてからお互いの名前を知ることになったのだ。
「……って、あれ? 愛優香さん、元気なくないですか?」
「え、そ、そうかな…?」
「そーっすよー。 何かありました?」
自分では普段通りにしているつもりだったのに年下の男のコに指摘されるなんて、よほどヒドい顔をしているのだろうか。
―――というか、してないわけがない。
数日前、私は婚約までいった元カレに別れを告げられたばかりなのだ。
理由は元カレが私の元友人と浮気し、その結果、彼女が妊娠したから。
挙げ句に別れ際、「仕事ばかりで面白味がなかった」だの「自分を見てくれなかったから浮気に走った」だの、私の所為にされて。
付き合い始めた頃は「仕事に打ち込む女って自立しててかっこいい」とまでほざいてたのに。
元友人は元友人で、婚約おめでとうと言っておきながら陰では略奪して嘲ってたというわけで。
ホンットーに、最低で勝手な連中だ。
そんな連中のために落ち込む必要はないのだけれど、年齢的なこともあってさすがに堪えた。
「あはは、推察通りよ。 ちょっと行き詰まっちゃって。
何か元気の出るような感じで作ってくれない?」
「了解ッス。 じゃあ、安定のビタミンカラーで作りますかねー。
あ、予算はいつもくらいでいいっすか?」
「うん、お願い」
彼がそのブーケに使う花を選定してくれてる間、店に置かれている他の花を眺めた。
大きなガラス窓から差し込む光を受けて、色とりどりの花たちはどれも綺麗に咲いていて一足先に春が来たようだ。
(癒されるなぁ…)
そんなことを考えながら目の前で咲き誇る花に顔を近づけたとき、お店の2階へとつながる階段から足音が聞こえてきた。
ふと顔を上げると、1組の男女が下りてきていて。
女性の方は確かこの花屋のオーナーさんだったハズだ。
そして、ブーケを手にした男性は…。
「中西京介…?!」
自分では心の中で言ったつもりだったけれど実際は口にしてたらしく、それは彼の耳に届いたようで。
彼は階段から私を見下ろし、じろりと睨んだ。
(やっば…!)
軽く変装しているところをみるとプライベートに近いのだろうか。
見も知らぬ人間に呼び捨てにされて不快にならないわけがないだろう。
が、相手は人気のある芸能人でもあるし、こちらが謝るのも変な話で。
私は軽く口を押さえて少し頭を下げてから彼に背を向けた。
「圭子さん、ありがとね。 残りは明日の夕方までに届けといてくれる?」
「わかったわ。 ドラマ、期待してるわね」
「ん、頑張るよ」
そんな会話を交わして彼はお店を出ていった。
それにしても、TV局に近いフラワーショップとはいえ、来店したトップアイドルと親しげに話をするなんてここのオーナーさんって何者なんだろう……。
「愛優香さーん、こんな感じでどーすっか?」
ちよっとした探偵気取りでいろいろと考えていた時、清翔くんが黄色や橙色をベースにした可愛らしい雰囲気の花たちを一纏めにして見せてきた。
「うん、いい感じ!」
「じゃ、これでラッピングしますねー」
初めの頃は花束を作る手がたどたどしくてハラハラしてたけれど、覚えが早いのかセンスがいいのか今ではすっかり主戦力となっているらしく、指名まで入るらしい。
彼の手元を見ていると、あっという間にビタミンカラーの小さなブーケが出来上がった。
「すごくかわいいっ! 清翔くんさすが!!」
「へへっ。
あ、写真、いいっすか?」
「もちろんどうぞー」
「ありがとうございますー」
出来上がったブーケを持って清翔くんが撮影ブースが置かれている棚に向かう。
国家資格であるフラワー装飾技能士を目指しているという彼は、今後の参考のためにと自分の作ったアレンジメントを写真に残し、オーナーさんにアドバイスをもらったりしているのだとか。
見た目で判断してはいけないとは言うけれど、パッと見はちょっと軽そうで何も考えてなさそうな男のコ。
だけどしっかりと夢がある。
(うん、負けてられないね!)
奴らには裏切られたのは腹立たしいけれど自分をシッカリと持てば前へ進める。
そう思いながら私は作ってもらったビタミンカラーのブーケを持ってお店を後にしたのだった。
〜 to be continued 〜