注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
一磨さんはぴば
ボルさんが更新停止作品のキャラをお祝いしてくれないのでこちらでお祝いですー
…とは言いつつ実は半分は5年前に書いてたりする…
同じ香りに包まれて with 本多一磨④
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《ダーリンは芸能人》二次創作短編
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---気が付けば部屋の中が薄暗くなっていた。
完全に暗くなっていないのは、間接照明が自動的に点灯したためだろうか。
時間を確認しようとサイドテーブルに置いたスマホに手を伸ばしたとき、突然部屋全体が明るくなった。
「えっ…!?」
暗さに目が慣れていた状態での点灯だから、その明るさに瞬間的に目を閉じる。
その時、入り口の方から声が聞こえた。
『え、すごい…』
一瞬にしてその声が一磨さんのものであることに気付く。
私はデッキチェアから飛び降りて、入り口にいるであろう一磨さんの元へと駆け出した。
「一磨さん…!」
「はっ、えっ、えっ、海尋ちゃん!??」
「良かったー、来られないかもって不安だったの。 でも、お祝い終わるの早かったのね」
「これはどういうこと? というか、どうして海尋ちゃんがここに??」
ワケが分からなくて目を白黒させる一磨さんに、他のメンバーたちが彼の誕生日のために私の分の沖縄への航空券とこの部屋を用意してくれたと種明かしをした。
「京介くんたちが今日の夜は必ず向かわせるって言ってくれてたけど、でも、一磨さんから事務所がお祝いしてくれるって聞いてたし、他の人もここで泊まってるんなら抜け出すのは難しいかなって思ってて」
「京介たちが?」
「うん」
「あー、だからか」
「え?」
「オレが体調悪いことにして延期になるように仕向けたんだな、アイツら」
「え? 一磨さん体調悪いの?!」
「え、違う違う。 京介たちが仕組んだってこと。
オレがこうやって海尋ちゃんの居るところに来れるようにね」
「じゃあ…」
「短い時間だけど、一緒に居よう?」
「うん…!」
それから一磨さんが先に汗を流したいと言うことで交代でシャワーを浴びることにした。
さらに、京介くんたちはディナーのルームサービスも頼んでくれていて、私と一磨さんはいつもよりもはるかに豪華な夕食をいただいた。
「はー、お腹いっぱい。 もう入らないー」
サーブをしてくれたスタッフさんたちがテーブルを片付けている間、私たちはテラスに出て外を眺める。
私の言葉に一磨さんがくすくすと笑いながら言った。
「そりゃあ食後のデザートもあれだけ食べたら」
「あっ、食いしん坊って思ったでしょ!」
「いやいや、海尋ちゃん本当に美味しそうに食べるから、見てる方も楽しいよ」
「もー」
一磨さんの言葉に私は頬を膨らませる。
東京では滅多に食べられないものもあり、残すという選択肢は私にはなかったのだ。
その結果がコレであることは間違いはないのだけど。
程なくしてサーブスタッフさんたちは部屋から退出し、本当に二人きりとなってしまった。
それを意識したとたん、私の心臓は少し早いリズムを刻む。
(や、やだ、静まって、心臓…!)
おそらく赤くなってるだろう頬を見られるのが何となく恥ずかしくて、私は俯く。
それでもやっぱり一磨さんのことが気になり、ちらりと視線を向けた。
「そ、それにしても、この部屋すごいね。 いくつ部屋があるんだろう?」
「海尋ちゃん見てないんだ?」
「え? あ、うん。 あまり。
デッキチェアに座って夕陽見てたらそのまま寝ちゃってたから…」
「じゃあ、見てみようか」
さり気なく手を取られて、二人にしては広すぎるこの部屋を片っ端から見ることにした。
まず、入り口から入ってすぐは10人くらいなら余裕で収容できるリビングルームだ。
プライベートプール付きテラスバルコニーとは直結していて、このリビングルームからでも夕陽が海に沈むのを見ることが出来る。
「すごいな…」
「テラスにプライベートプールがあるって初めて見たかも」
次にリビングルームの左手側。
シャワールーム付きのサブベッドルームとダイニングルームが並ぶ。
またダイニングルームは海に面していて、今回は残念なことに時間がズレてしまったけれど、同じく夕陽を見ながらの食事が可能だ。
加えて、室内図によるとダイニングルームの壁に隠れているけれど鍵付きのドアがあって、隣の部屋と行き来が出来るらしい。
つまりそのドアを開放すると、こちらの2つのベッドルームと合わせてかなりの人数で宿泊出来ると言うことになる。
「みんなと泊まったら楽しそう」
「うーん、楽しいと言うよりただうるさいだけのような」
苦笑しながら言う一磨さんに思わず同意する。
それから、プールサイドを通ってリビングルーム右手側へ。
一番海に近いのはメインベッドルームだ。
二方向が海に面していて、朝起きたときにはすぐに海が目にはいるという贅沢さ。
それにベッドサイズはワイドキングと呼ばれるもので、4~5人くらいならその上でカードゲームも出来そうだ。
その隣にはシャワールーム付きウォッシュルームとジャグジー付きバスルームが並び、そのどこからでも海が見える。
特にバスルームはメインベッドルームと同じく二方向が海に面していて、しかもそれだけでなく天井もガラス張り。
さながら露天風呂のようだ。
そしてかなり大きくて、たぶん二人で入ってもまだ余裕がある。
それも海を眺めながらゆっくりと…。
でも二人で入りたいなんて言ったら引かれるかもしれない。
「…海尋ちゃん?」
「は、はい?」
「難しい顔してどうしたの?」
「え…! そ、そんな顔してた?」
「うん、ココに皺寄せてた」
くすくすと笑いながら一磨さんは私の眉間をツンと突っつく。
「え、やだ、ホントに??」
「何か考えごと?」
優しく微笑む一磨さんに、一緒にお風呂に入りたいって言えたら…。
でもさすがに恥ずかしくて、引かれるかもと思ったら、言う勇気が出なくて。
私は何とか笑顔を作って首を横に振った。
「…考えごとじゃなくて、あまりに凄くて茫然としてた」
「そっか。
でも本当に凄く贅沢なお風呂だよね。 ジャグジー付きは憧れるよ」
「うん、海を見ながら一磨さんと一緒に入れたらいいな…」
「え…」
驚いた表情の一磨さんに、うっとりとして心の中で呟いたつもりの言葉が口から出ていたことに気付く。
「えっ、あっ…!」
思わず口を覆ったけど遅かった。
背中をヒンヤリとした汗が伝い、全身からサァッと音を立てて血の気が引いていく…。
「海尋ちゃん…」
「…ごごごごめんなさい! 聞かなかったことにして下さい…!!!」
余りにも恥ずかしすぎて、顔を覆ってうずくまる。
穴があったら入りたいとは正しくこのことだ。
(口にしちゃうなんて…どうしたらいいの…!?)
ぐるぐると探しても出ない解答を求めていたその時、より近くでふわりと一磨さんの匂いがした。
彼が隣に座ったのだ。
「…うん、オレも海尋ちゃんと同じ」
「え…」
顔を上げると、一磨さんがそっと顔を逸らした。
よく見ると耳が真っ赤になっていて…。
彼が同じ気持ちなら、言っても大丈夫、かな?
そう思って私は一大決心をする。
「じ、じゃあ、あの、一緒に入って…ください……」
これだけを言うのに心臓が破裂しそうなほど強く拍動した。
それを紛らわすように、私は一磨さんの返事も聞かないですっくと立ち上がって、「先に入ってます…!」と叫ぶように言ってひとりでバスルームに入っていく。
自分でも大胆なことをしていると分かっているけれど、ここまで来たからには進むしかないのだ。
バスタブの中はすでに乳白色のお湯が張られていて、ジャグジーが稼働していた。
カンタンに体を流して湯船に浸かっていると、カチャリと音がしてバスルームの扉が開く。
そして私と同じように掛け湯をした一磨さんがバスタブに入ってきて…私たちは背中合わせの状態になる。
「…」
「…」
続く沈黙。
言葉を探すものの何も言えず、聞こえるのはジェット水流の音と自分の心臓の音。
私は十数分前の自分の言動に早くも後悔し始めていた。
「あの、さ」
「…う、うん」
「もしかして…誰かに言われた…?」
「え…?」
「いや、あの、普段なら海尋ちゃんがあんなこと言わないのに…って思って……」
一磨さんの言葉に衝撃を受ける。
これってひょっとして、引いちゃってるってこと…?
しかも、誰かに言われたから行動に遷したと思われてるってこと…?
頭の中がパニックになると同時に、何だかモヤモヤし始めて。
「……」
「…海尋ちゃん…?」
「ごめんなさい、先に上がります」
「えっ?」
誰が聞いても不機嫌だと分かる声でそう言った私は、戸惑った様子の彼をおいてバスタブから立ち上がった。
亮太くんや京介くんにプレゼントの相談をしててそう言った話になったのは確かだけど、でも実際には自分自身も少しは気になっていた部分もあって。
だから漏らしてしまったあの言葉は誰から言われたわけでもなく、間違いなく私の本音なのだ。
「海尋ちゃん、ごめん…!」
バスタブから出ようとしていた私を一磨さんは背中から抱きしめる。
その瞬間、ふっと気が緩んで……意図せず頬を涙が伝った。
「ごめん…、ここ最近いろいろ言われたのもあって…その…」
「……私の方こそごめんなさい…。 でも、ちょっと不安だったの…。
人それぞれだって分かっているけど、でも…」
少し鼻声で言う私を一磨さんは更に強く抱きしめる。
「本当に大切にしたいから、ずっとそばに居て欲しいから…慎重になってたんだけど、でもそれで海尋ちゃんを不安にさせてたんなら本末転倒だな」
私は身体に廻された一磨さんの腕にそっと触れた。
「一磨さんのそんな優しいところも好き…なのに、なんで私、焦ったりしてたんだろ……」
「海尋ちゃん…。
仕切り直しても…いいかな」
私が無言で頷くと、一磨さんはバスローブで私の身体を包み、そしてお姫様だっこしてそっと優しくキスをした。
それからそのままベッドルームに向かい、そっと私をベッドに下ろして自分も横になり、布団を引き寄せる。
そのとき、ふわりとお風呂の中に居る時と同じ香りに包まれた。
「あ……」
「……ん…?」
「……同じ…匂い…」
一磨さんはそっと手のひらで私の頬を撫でる。
私はその手に自分の手を重ね、一度瞳を閉じて、もう一度彼を見た。
「一磨さん…大好き」
そう言って笑顔を向けると、一磨さんは一瞬驚いた顔をして、だけどすぐに嬉しそうな顔をした。
「海尋……オレも…大好きだよ―――」
それから私たちの唇は深く重なり……月が暁の空に消えていくまで何度も一つになって―――。
~ end ~