創作◆Staticeの花言葉とともに with 中西京介95【完】 | 二次元のカレに逃避中♪

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Staticeの花言葉とともに with 中西京介95


~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~

 

そしてとうとう香月さんの会社が全力で押し出すブランド「AQUA QUEEN & blossum princess」の新作発表会の日がやってきた。

イメージキャラクターとしてそれには私も出席することになっている。

朝、出かける準備をしていると京介くんが尋ねた。

 

「海尋、今日は何時から?」

「午前中は事務所に呼ばれてて、17時から香月さんのところでプレスリリース。

 京介くんのほうは?」

「オレも午前中は事務所で、その後はレッスンかなー」

「あぁ、新曲出すんだっけ。

 じゃあ、今日はついてきてもらえないのね」

「ん? どした??」

「ちょっとね、緊張しちゃって」

「どうしたの。 CM撮影はうまくいったんでしょ?」

「そうなんだけどー」

 

これまでに何度も同じ経験はしてきた。

だけど香月さんに社運をかけた…なんて言われたものだから、気がついたら緊張感でいっぱいになってしまう自分がいる。

CM撮影には自分の持てる全ての力を出したつもりだし、関係者のみのCM試写会でも好評で、手ごたえはあった。

だから不安になる要素はないんだけど、何故か不意に緊張感に襲われるのだ。

まあ、緊張感はあっても嫌な予感とかはしないから大丈夫だと思うんだけど。

 

「さ、行こっか」

「うん!」

 

いつも通り、玄関を出る前に京介くんと触れるだけの「いってきますのキス」をして。

そのあとは、京介くんが自分の事務所に行く前に私を送ってくれた。

車の中での他愛のない話をしているうちに事務所に辿り着き、エントランス前で私は彼を見送る。

彼の車が見えなくなってから事務所に入り、山田さんに声を掛けて一緒に会議室へと向かった。

席に着くと同時に、山田さんはテーブルの上に「企画書」と書かれた書類を置いた。

 

「あの、それ」

「ドラマのオファーがあったんで、とりあえず見てくれ」

「あ、はい…」

 

渡された企画書の1ページ目を見ると、そこにはドラマのタイトルと放送開始予定日が書かれていた。

それからページをめくる。

ドラマのあらすじが書かれていて、王道の恋愛ものであることが分かった。

そして、次のページをめくるとそこには。

 

「え、これ…!」

「ああ。 久々の共演だな」

 

私と京介くんの名前があったのだ。

思わず頬が緩んだ瞬間、ふ、と山田さんに笑われてしまった。

恥ずかしくて表情を引き締め、続きを見る。

出演者の中には(仮)が付いているものの、これまでお世話になった人たちの名前も並んでいる。

また、主題歌を wave が、挿入歌を JADE が歌うという、とっても贅沢な内容だ。

京介くんたちwaveが新曲を出すというのは、このドラマとタイアップするためだったのだと気付く。

それから、スポンサーの中には香月さんの経営するジュエリーショップの名前もあった。

先日のCM撮影といい、今回のスポンサーの件といい、香月さんが新ブランドにかなり力を入れていることを改めて思い知る。

 

「内容は王道のものだが共演者がベテラン揃いだからな、気は抜けないぞ」

「もちろんそのつもりです!」

「………そんな緩んだ顔を見てるとそうは思えないがな…」

「!」

 

山田さんが溜め息をつきながら呆れた表情で指摘するのに顔に熱が集中するのが分かった。

他の出演者のことや香月さんの新ブランドへの思い入れ、どれをとっても身が引き締まる思いはする。

だけど、やはり京介くんと久しぶりに共演するという嬉しさは他のどの感情よりも上回るのだから仕方がない…。

そんな私に山田さんは2度目の溜め息をつき、立ち上がると持っていた手帳で私の頭をポンと叩いて、あいさつ回りに向かうことを告げた。

最初に行ったのは、京介くんの所属事務所であるスター・プロモーション。

会議室に通されてすぐに、チーフマネージャーの飯田橋さんと京介くんが顔を出した。

 

「今回もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」

 

二人のマネージャーが挨拶を交わし、着席を促された。

そしてすぐに飯田橋さんが口を開いた。

 

「京介から報告を受けました。 紫藤さんからプロポーズ承諾の返事をもらった、と」

「はい」

「それでね、注意してもらいたいんだけど。

 このドラマが終わるまで、婚約指輪はしばらく着けないようにしてください」

「え…」

 

ふと京介くんのほうを見ると、複雑そうな表情をしている。

私たちの戸惑いに気付いた山田さんが続けて言った。

 

「ドラマの内容を考えると…だな、オレもそれが妥当だと思う。

 それに婚約発表もまだ済ませていないというのもあるし…」

 

私たちとしてはすぐにでも公表したかったのだけど、婚約発表について待ったを掛けたのは両方の事務所だ。

確かにプロポーズは受けたばかりだし、タイミングがあるというのも理解できる。

だけどドラマが終わるまで…というのは承服しがたい。

そんな私たちの態度に飯田橋さんが言った。

 

「二人が不服なのは承知してる。 だけど、本当に待って。

 京介が復帰したときのドラマがコケてしまった以上、うちとしては今でも慎重にならざるを得ないの」

 

頭を下げられながらそう言われてしまい、私たちは承服するしかなかった。

多くのファンがいてイメージを大切にするお仕事である以上、我を通すことは得策ではないのだ。

それから次回の打ち合わせの確認をして、私と山田さんは次の挨拶回りに行くことになった。

会議室を出て、駐車場まで送ってもらいながら私たちは言葉を交わす。

 

「…プロポーズしてもらえて嬉しかったのになぁ」

「こういう世界にいる以上、仕方ないよね。

 でもプロポーズの取り消しはないから」

「ちょ、取り消されたらシャレになんないんだけど!」

 

少し声が大きくなっていたのか、歩きながら二人のマネージャーからお小言をくらってしまった。

私と京介くんは首を竦めて苦笑いを零す。

 

「今日はありがとうございました」

「では、また」

 

山田さんと車に乗り込み、京介くんに手を振る。

車の窓の外で京介くんが何かを言う。

 

(「あとでね」…? 京介くん、今日は早めに帰ってくるのかな?)

 

京介くんのその言葉にそう判断した私は笑顔で頷いた。

スタプロを出た後は、指定された時間まではドラマのキー局やディレクターさん、プロデューサーさんなどへの挨拶回りをこなす。

スポンサーである香月さんへの挨拶はプレスリリースのときに同時にということで、おおよその挨拶まわりを終えると私たちはジュエリーショップへと向かった。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう。

 プレスリリース用の衣装を用意してあるから、控え室へ行ってくれるかな」

「わかりました」

 

香月さんの指示通りに控え室に向かう。

そこにはウェディングドレスを思わせるような、真っ白な衣装が掛けられていた。

2つのブランドのどちらとも合うような、でも、どちらとも合わないようなそんな衣装だ。

何となく不思議な気持ちがこみ上げてくるけれど、他に衣装は用意されていなかったため、とりあえずそれを着ることにした。

しばらくしてヘアメイクさんもやってきたのでそのまま施術をお願いをする。

その後、たくさんの報道陣が集まる中、香月さんが出す新しい宝石ブランド「AQUA QUEEN & blossum princess」の発表が始まった。

彼の挨拶に続き、このときのために撮影したCMが1分ほど流れ、それが終わると実際にジュエリーをつけたモデルさんたちが壇上に並ぶ。

それぞれのテーマに合わせたアクセサリーは、それに見合ったイメージのモデルさんが付けていた。

「AQUA QUEEN」のほうは成熟した魅力のあるモデルさんが、「blossum princess」のほうは初々しさを魅力としたモデルさんが、というように。

香月さんはブランドとこれから全国に流されるCMについての説明をした後にステージから私を呼ぶ。

一礼をして彼の横に並び、微笑んで一歩前に踏み出すと、香月さんは両方のブランドとは少し違う系統のネックレスを私に着けた。

と同時にたくさんのフラッシュがたかれ、報道陣の質問にもカンペが用意されていたのもあって難なく行えた。

そうしてプレスリリースが終わるかというときに。

マイクを持った香月さんが思いもかけなかったことを言った。

 

「今日はサプライズゲストをお呼びしております」

 

サプライズゲストの話は聞いていなかったけれど、興味深々でその入り口のほうを見る。

その会場にいる全員が見ている中、赤いサテンのカーテンが開いた。

 

「!」

 

シルバーグレーの光沢のあるスーツを着て、サプライズゲストとして会場に入ってきたのは京介くんだった。

朝に家を出るときも午前中にスタプロで会ったときにも何も言ってなかったからびっくりだ。

来るなら来ると言ってくれれば心強かったのに。

なにも黙ってることないじゃない……そう思いながら頬を膨らませて京介くんを恨みがましく見る。

会場内がざわめいてフラッシュがたかれる中、京介くんは私のほうに歩いてきた。

 

「もー、どうして教えてくれなかったの」

「驚いた?」

「そりゃ驚くよ…。 香月さんからも何にも聞いてなかったもん」

「…このあと、もっと驚かせるから」

「はぇ?」

 

突然思いもかけないことを言われたものだから気の抜けた返事をしてしまった。

京介くんは一瞬驚いた顔をして、それから笑いを堪えるようにして肩を震わせて笑っている。

大勢の前でミスったと冷や汗をかいていると、京介くんはポケットから指輪のケースを取り出した。

 

(あれ? この前もらったのと同じ箱…?

 というか、こんなところで指輪を出すって大丈夫なの!?)

 

頭をひねっていると、京介くんは私の左手をとり、今は何もつけていない薬指にプロポーズをしてくれた時と同じように指輪をはめた。

ホールにいた報道陣も壇上に並んでいたモデルさんたちも、京介くんの突然の行動に全員が息を止めたかのように静まり返って。

その中でただ一人、香月さんがニヤリと笑う。

 

「ここでもう一つ!、ブライダル部門での新シリーズ『Statice』を発表させていただきます!

 このブランドのデザインには、スタープロモーションの中西京介さんにアドバイザーとしてご協力していただくことになっております」

 

その瞬間、会場のいたるところからフラッシュが焚かれた。

香月さんの言葉に会場が沸くが、私の頭の中も混乱する。

さっきスタプロで婚約指輪は着けるなと言われたばかりで、その京介くんがブライダルラインのアドバイザー?????

 

「なにがどうなって…」

「ごめん、あとで話す」

 

目を白黒させている私に申し訳なさそうに京介くんがそう言い、着けられた指輪が報道陣に見えるように指先を持って掲げる。

すると案の定というか当たり前というか、報道陣からたくさんの質問が投げられた。

 

「ここで婚約発表でしょうか!?」

「それは婚約指輪ということでいいんですか?!」

 

同じような質問がいくつも続き、香月さんがもう一度マイクを持った。

 

「恋人宣言をしている二人なので皆さんがそう思われるのも無理ないですが、残念ながら違います。

 これは次回のドラマにこれらのジュエリーを提供することになってますので、その宣伝も兼ねております」

 

スクープかと一斉にフラッシュを焚いていた報道陣からは一気に落胆の声を上がった。

報道陣がこういう反応をすることを香月さんは狙っていて、宣伝効果が上がると思ったのだろうか。

だとしたらちょっと複雑な気分だ。

秘密ではあるものの、実際には婚約しているわけだし…。

もっともここで不満を漏らすわけにはいかないから、複雑な心境をぐっと堪えて笑みを浮かべる。

そんなハプニングも起こしながら、プレスリリースは終了するのだった。

 

 

 

そうして―――。

私と京介くんが主役のドラマは無事に最終回を迎える。

ドラマは大成功だった。

王道の恋愛ものではあったけれどどの回も視聴率は20%を超えたのだ。

脚本などの内容の良さに加え、香月さんが提供したジュエリーが俳優陣に色を添えたこと、さらに香月さんが開いたプレスの内容が大きく影響したのだと思う。

成功したおかげでまだしばらくはこの世界からはじかれることはなさそうだ。

 

「えぇっ、そうなの!?」

 

打ち上げの後、家に戻って彼から驚くべき内容を聞かされた。

プロポーズのときにもらった婚約指輪、それは京介くんがデザインしたものだとか。

 

「前に香月さんから『婚約指輪買わないか』って言われたでしょ?

 あの時はまた結婚を急かされたと思ってムッとして考えてないって言っちゃったけどさ。

 でもどうしても気になって相談に行ったわけ。

 そうしたら新しいブライダルラインを作るから協力しろって言われて。

 で、どうせなら自分でデザインしたのを贈れば?って言われたんだよね…」

 

京介くんが多才なのは知っているけれど、まさか指輪までデザインするだなんて…。

でもよくよく考えてみれば、京介くんのお父さまはオートクチュールのデザイナーなのだから彼にもその才能があっても驚くことではないのか。

私はドレッサーの引き出しにしまってあった指輪を取り出し、左薬指にはめてみた。

これが京介くんがデザインしたものだと知った途端、なんだか神々しく見えるから不思議だ。

 

「どうしたの?」

 

京介くんが後ろから私を抱きしめ、首筋にキスをする。

くすぐったさに首を竦めると、指先であごを捉えられて彼のほうに向かせられる。

同時に唇に落ちてくる優しいぬくもり。

―――私たちは明日婚約発表をすることになっている。

だからこれが恋人でいられる最後の時間。

…正しく言えば今はもう婚約者なんだけどね。

 

「…行こ?」

 

どこに行くのかわかっていて、私はコクリと頷く。

不意に抱き上げられて、そのまま寝室へと連れていかれた。

明かりのついていない寝室のベッドの上には、満月の蒼い光が降り注いでいて。

そっとその光の中に下ろされると同時に、優しいキスが落とされて。

それから何度も囁かれる言葉と優しい指使い、それだけで私の息は上がっていく。

 

「京介くん…大好きだよ」

 

愛される喜びにそう言うと京介くんは幸せそうに微笑んだ。

いろんなことが起きて、二人の関係が一時期危なくなっても、それでもなおこうやって彼と一緒にいられる。

それは奇跡じゃなくて運命なのだと、月の光を集める薬指のエンゲージリングがひときわ輝いてそう告げた気がした―――。

 

 

~ end ~