創作◆Staticeの花言葉とともに with 中西京介84 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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Staticeの花言葉とともに with 中西京介84


 
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
 

 

 

「や…っ、離して…!」

力の限り、掴まれた腕から逃れようとしてもがいた。
それでも腕は離されることなく。
持っていたバッグで反撃を試みようとしたとき。

「―――海尋さんっ、私です…!」
「…え……?」

聞こえてきた声に、目の前にいる人の顔を確かめる。

「岡本…さん……?」
「どうしたんですか? もう少しで階段から落ちるところでしたよ?」

心配そうに顔を覗き込む彼にホッと気を抜くと同時に震えが来た。
いま起きたことと、不審者の存在を口にしようとする。
が。
ふと思い出された、岡本さんの過去。
私に見せていた顔と、ちがやさんが見ていた顔の違い。
そして、マナミさんとも関わりがあった。
それらが頭の中に浮かんだとき、別の恐怖が生まれた。

(さっき…)

フラッシュバックする光景―――口を塞がれたときに見た袖口、そして羽交い絞めにされたときに認識した匂い。

それが、目の前にいる人とリンクして。

そして彼は、思いもかけない言葉を口にする。

「ダメじゃないですか、こんな人けのないところにいては。

 脅迫状の犯人、まだ捕まっていないんでしょう? 狙われているんですから、もっと危機感を持たなくてはいけませんよ?」
「…!」

大道具倉庫での荷崩れとか。
地下駐車場でのひき逃げ未遂とか。
それらは他のスタッフさんたちも知ってることだけれど。
脅迫状が来たことを知っているのは、私自身と山田さん、社長、それからモモちゃんと佐倉刑事。
京介くんにだって教えてない。
それでも知っているということは…あの脅迫状を出した本人―――?
その答えを導き出した時、私は思わず、岡本さんから距離を取った。

「海尋さん…?」
「…どうして脅迫状のことを……それにさっきのあれって…」
「!」

意図せず口から洩れた呟きに、目の前の人は優しげな表情から一瞬にして無表情になる。

それから一転して顔を歪めて嗤った。

「…あぁ、気付かれましたか。 しょうがないですねぇ」

そう言うと同時に、岡本さんは私のほうへ手を伸ばした。

その腕に捕まる前に私は後ずさる。

「なぜ逃げるんです?」

 

さらに一歩足を踏み出す岡本さんから私はなおも後ずさった。

これまで見せていた優しげな表情とは全く違う顔に背筋が凍る。

 

「前々から思ってたんですよ、あんな男は海尋さんにふさわしくないって」
「……あんな男って…京介くんのこと…?」
「あの男がどれだけ不誠実か、あなたも知っているでしょう?
 あなたには誠実な人が似合うんです―――そう、私のような。

 だから海尋さんのためにあれだけ別れる手助けをしてあげたんですけどね。
 あのときあの男が死ななかったのは誤算でした…」
 

岡本さんの口から語られたことが、初めは何のことだか理解できなかった。

京介くんが死ななかったのが誤算ってどういうこと…?

彼が大怪我したあの事件のことだとすぐには直結しなかった。

だけど―――。

 

「次はもっと巧くやりますから」

「!!!」

「大丈夫、今度は私が確実に止めを刺します。

 だから安心してくださいね」

 

あの事故が作為的に起こされたものだと佐倉刑事から聞いていた。

あの日、確かにこの人も同じ建物の中にいて。

事件が起きたときに件のスタジオにいなかったけれど…それは照明器具に細工をするように誰かに頼んでいたから―――?

その考えに到達して、目の前のこの人が京介くんを殺そうとした人だと認識する。

 

「……」

「え?」

「…最っ低…! あなた、自分が何をしたのかわかってるの!?

 頭、大丈夫なの? 普通じゃないよ!!

 京介くんが私にふさわしくない…?

 そんなこと、あなたが決めることじゃない! ふざけないで!!」

叫ぶように言うと岡本さんは歪んだ笑みを消した。

(これはヤバイ…逃げなきゃ!)

目の前にある階段へは岡本さんが立ちはだかって無理っぽい。
だけど、闇雲に走っても迷路のようになっているこの建物の中では体力を消耗するだけだと再び気付く。
逡巡した一瞬をついて、彼の手が私を掴んだ。

「は…離して…!」
「さぁ、行きましょうね、海尋さん…」

掴まれた手を振りほどこうとしてもがっちりと掴まれてそれは叶わなかった。
引き摺られる恐怖に思わず叫んだ言葉は―――。

「京介くん、助けて…!」

その瞬間、岡本さんの足が止まる。
それを喜んだのも束の間…。

「ひ…っ!」

振り返って私を見下ろすその顔は、怒気を孕んでいた。
掴む力がさらに増し、骨の軋む音が聞こえる錯覚さえ起こして…。
 

 

~ to be continued ~