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Staticeの花言葉とともに with 中西京介82
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
ドラマ収録が終わったのは18時半。
心のどこかで間に合わないかもと思っていたけれど、意外と早く私の分は終了した。
「お疲れさまでした!」
おざなりにならないように挨拶しつつ、共演者さんたちやスタッフさんたちの返事を聞くよりも早く、私はスタジオを飛び出した。
この時間帯だとどんなに急いでもここからA局までは30分は掛ってしまう。
京介くんとマナミさんが会うギリギリの時間だ。
「―――海尋、こっちだ!」
「山田さん?!」
スタジオ入りして関係者に挨拶をした後、別の用事で席をはずしていた山田さんが1階エントランスを少し離れたところから私を呼んだ。
「どうして…」
「話は後だ。 とりあえず乗れ」
「え…」
「この時間帯だとタクシーを捕まえるのも難しい。 ―――早く」
「は、はい!」
私が乗り込むと山田さんはいつものような安定のハンドルさばきで、だけどいつもよりも少し強くアクセルを踏み込んだ。
彼のことだから、話し合いの結果がどうなろうとも不測の事態に備えて一緒に来てくれるのだろう。
京介くんがマナミさんを説き伏せることが出来なかった場合とか。
京介くんが激昂したマナミさんに危害を加えられた場合とか。
話し合いの場に現れた私をマナミさんが襲いかかってきたとか。
私にとって良くない結果となった場合のために。
(―――ううん、そんなことは考えない。 マナミさんとの話し合いは絶対に旨くいく。
京介くんは私と―――)
私は手を組み、目を瞑って祈る。
私たちが同じ未来をともに生きていけますように。
……やがて、山田さんの運転する車はA局の地下駐車場に着き、そのエントランスへと横付けした。
腕時計の時間は午後7時15分を示している。
思っていたよりも時間が経過してしまったけれど、それでも山田さんがいなければもっと掛っていたはずだ。
そのことに感謝しながら後部座席のドアを開け、バッグをひっつかんで私は急いで車外へと飛び出す。
「海尋!」
「は、はい!」
「…無茶だけはするな。 何かあったらすぐに呼べ」
「わかりました! いってきます…!」
山田さんに頭を下げて私は地下エントランスからA局に入った。
うかつなことにどの部屋でマナミさんと会う約束をしていたのか聞いていなかったから、片っ端から探すしかない。
それでも、クローク脇にある『各種使用状況表』を見ればだいたいの予測はつく。
思いっきりプライベートな話し合いで部屋を正式に押さえているとは思えないから、空き室を調べればいい。
(空いてる部屋は…A513とA320とB204と…、って、撮った方が早いな)
フラッシュを焚かないようにして状況表をスマホで撮り、空いてる一番近い部屋へと走った。
残念ながら、そこは誰もいないようだった。
(よし、次…!)
光源がなかったせいで暗く写った画面に目を凝らし、次の部屋へと走る。
そうやっていくつかの部屋を一つ一つ覗いていった。
クロークとかスタジオから遠ざかるに従って空き室も多くなっていき、廊下を行き交う人も少なくなっていく。
話の内容が内容なだけに、他の人に聞かれるとマズイこともあって人の少ない場所を選んだんだろうけど。
時間だけが過ぎていって焦りが出てきたころ。
人がいなくて廊下の電気がほぼ落とされている階のある部屋から光が漏れているのが見えた。
(もしかして、あそこ…?)
足音をたてないように気をつけながらその部屋へと近づく。
次第に聞こえてくる、言い争うような声。
『―――納得できない!』
その声は紛れもなく、マナミさんの声で。
息を殺して部屋を覗く。
そこには、彼女と対峙する京介くんの姿もあった―――。
~ to be continued ~