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Staticeの花言葉とともに with 中西京介79
~ダーリンは芸能人・妄想2次小説43~
地下駐車場で私を轢こうとした人。
これまでのことを考えると「あの人」しか浮かばないのだけれど。
私のそんな気持ちを見透かしてか、ちがやさんはコクリと肯いた。
「同じ時間に同じ場所にいて、それで海尋さんを快く思っていない人…って言えば分ると思う……」
「…本音言うと、そうかもしれないと思ってたの。
だけど、あくまでも『かも』で…」
私がそう言うと彼女は首を横に振った。
そしてこちらをまっすぐ見て言葉を続ける。
「いいえ、間違いないの。 だって…『あの人』と『兄』が言い合ってるのを聞いたんだもの」
「!」
「聞いたというよりも聞こえたっていうほうが正しいかも。
ホントに偶然だったの。 あの日から数日経って…海尋さんが轢かれかけたことを知った『兄』が『あの人』に詰め寄ってた。
『あの人』、運転していたのは自分であり、海尋さんを轢こうとしたことを悪びれもなく言ったわ」
ちがやさんは本当のことを言ってるのだろう。
これまで生きていた芸能界の世界で嫉妬や逆恨みを受けることはあったものの、明確な悪意と殺意を向けられたのは初めてかもしれない。
心が冷たく重いものに飲み込まれていくような気がする…。
「たぶん、あの人、また仕掛けてくるわ。 気をつけて。
…それから、私の『兄』にも」
「え? な、なんでちがやさんのお兄さんも?」
「もう、隠しても仕方ないから言うわね。 海尋さんが危ない目に遭わないためにも。
海尋さんがデビューした時からあなたのファンだった『兄』は…仕事であなたと直接係わるようになってから、あなたに前以上に執着するようになったみたいなの」
「私と、仕事で係わった人…?」
駐車場での轢き逃げ未遂の件から、全く予想もしなかった内容へと話がシフトして、頭の中が混乱し始める。
っていうか、ちがやさんの『お兄さん』って誰だっけ?
仕事で直接係わるようになってから…って言われても、人の出入りの多いこの世界では常に新しい誰かと係わってるのだから思いつかない。
「…あの時も京介さんを誘惑しろと言われて…。 一回は断ったけど、責められて断りきれなくて……」
そう言って下を向く彼女を見る。
そういえば、人がいるところといないところでは彼女の態度がまるっきり違ってたって京介くんが言ってたっけ。
あの時ちがやさんの放った言葉は、結局演技だったってことか。
私もマスコミも、ものの見事に騙されてしまったけれど。
「で、いったい誰のことを―――」
「…ヒルズトップ警備の…岡本辰彦、が私の異父兄なの」
「―――え?」
思いもかけない人の名前を聞き、一瞬耳を疑う。
だけどその真剣な表情から彼女が嘘を言ってるようには思えなかった。
……岡本さんが?
ちがやさんの『お兄さん』で?
私と京介くんの仲を裂こうとしてた?
それが本当なら、仕事で頻繁に会うようになって、岡本さんがその境界線を見失った挙げ句に。
あの時に突然激昂したのも納得が…いく。
そして、距離を詰めていく彼に何となく恐怖を感じ始めていたのも、その友人である夏目さんが「あいつは変わってしまった」と言ってたのも…。
「兄は、自分は母に捨てられたのに、私が母に育てられたことを恨んでるようなの。
だから出来る限り、兄のいうことを聞こうと思ってた。 だけど最近は理解不能なことも言い出して……」
ちがやさんのその言葉で岡本さんの狂気を読み取る。
私が山田さんに視線を向けると、彼も何かを感じ取ったのか青ざめた表情のまま肯いた。
―――暮明の中から忍び寄る恐怖に、私の背中を冷たい汗が流れた。
~ to be continued ~