創作◆小物えぴそーど♪「京紅」with 鷹司★イケメン大奥恋の園2次創作短編 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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とある事情があって作成した、《イケメン大奥★恋の園》の2次創作です。

製作にあたり、サイバード社さまとは関連がありませんので、私の妄想として片付けて下さいますよう、お願いいたします。


フォレストブログ閉鎖に伴い、こちらでUPします。

去年5月にフォレストブログにて公開したものです。




  小物えぴそーど♪「京紅」with 鷹司

          ★

イケメン大奥★恋の園・2次創作ショート・ストーリー




ある日の御座之間。

白磁の器や貝殻に絵付けされた器などが、いくつもの高台に乗せられて並んでいた。

中身は全て、紅だ。

大奥の主だった顔ぶれがこの場に集まり、器や紅の色の度合いなどを検分している。

その中で、真っ先に蔵之丞さんが私のもとに一つの器を持ってきた。


「こちらの紅などが、上様にもお似合いになるかと」

「うむ」


蔵之丞さんから手渡された白磁の器の中に紅が玉虫色に輝いている。


(なんてきれいなんだろう…)

(紅って城下町にいた時も何度か見たことはあるけど、こんなに輝いていなかった気がする)

(城下町で売られているものとは、たぶん、質も違うんだろうな)


そのとき、蔵之丞さんがくすりと笑った。


「な、なんだ、蔵之丞」

「いえ、やはり上様は女性なのだと思いまして」

「え…」

「紅をご覧になるときの瞳の輝きが違いますから」

「!」

(や、やだ…素に戻っちゃった……)


私は平静を装いながら、手に取っていた白磁の器を蔵之丞さんに返す。


「つい、な。

 美しいものを見るとやはり心が満たされるものだな」


そのとき、鷹司と視線が合った。

だけど、鷹司はふぃっと視線をそらしてしまう。


(…え? 鷹司……?)


それから数日、鷹司は葵の間に来ることはなかった。




あの日以来、鷹司のあの時の表情が気になって頭から離れなかった。


(…鷹司を怒らせるようなこと、何かしたのかな…)


何とか公務をこなすものの、気がそぞろなのが春日局様もわかっているらしく、お小言をもらう日々が続いていた。

それからさらに数日経ったころ―――。

鷹司がいきなり葵の間に顔を出した。


「鷹司!ずっと何をして…」

「涼香、いいものを持ってきた」

「いいもの?」

「ほら」


そう言って並べたのは、きれいに絵付けされた蛤の貝殻。


「これって…」

「京都の実家に言って、取り寄せてもらった『京紅』だ」

「京紅!?」


『京紅』は紅の中でも京都で作られた上質な紅で、『金一匁(もんめ)紅一匁』と言われるくらい高価なものだ。


「そんな高価なもの……」

(っていうか、鷹司、わざわざ実家に連絡して…?)

「献上されるものに粗悪品はないだろうけど、やはりお前には上質の物を付けさせてやりてぇしな」

「ほら、付けてみろ」


鷹司はそういって1つの蛤の貝殻の器を私の手のひらに乗せた。


「う…うん……」


だけど、庶民育ちの私はその高価さを知ってるだけに手が震えて、紅点し指を付けることすら出来ない。


「鷹司、手が震えちゃうよ…」

「しょうがねえなぁ」


鷹司は自分の紅点し指で紅を取った。


「じっとしてろよ?」


鷹司は自分の紅点し指を私の唇の上で何度もなぞる。

紅を付ける所作だとは分かっていても、その、唇に触れる指に心臓が強く拍動し、私は思わず身を引いた。


「涼香、動くな! 紅がはみだすだろ」

「ご、ごめん。 だって……」


自分の身体すべてが赤くなっていくのが分かるくらい、熱くなっていく。

それでも、目を瞑って何とかじっと耐えていた。


「……目を開けてもいいぞ。 ほら、見てみろ」


鷹司に手渡された手鏡で自分の顔をのぞくと、きれいな紅が映えていた。


「わぁ……。 鷹司、ありがとう!」


私は鷹司に目いっぱいの笑顔でお礼を言った。

すると、鷹司は私から視線を外して怒ったように言う。


「涼香、公務に戻るときはその紅を落とせよ?」

「え…どうして…? …似合わない……?」

「……そうじゃないけど…」

「じゃあ、どうして…」

「……」

「せっかく鷹司がくれたものだからつけていたいのに」

「だめなものはだめなんだよ!」


鷹司は片手で私の手首をつかみ、もう片方の手で後頭部を押さえて無理やり口づけをした。

そして、ときおり唇を舐めながら唇をついばむようにさらに口づけてくる。

その口付けの仕方に鼓動がさらに高くなっていく。


「…っん!」


――長く感じられた口付けのあと、鷹司は私の瞳をじっと見つめて言った。


「この紅を付けたお前の顔は俺だけのものだ」

「!」

普段なら言わないようなことを言った鷹司も顔を真っ赤にしている。


(こんな鷹司、初めて見たかも…)

「紅を付けたお前を見てきれいだと思っていいのは俺だけだから」

「……うん」

「ほら、公務、行ってこい」


鷹司は今度は軽く口付けをした。

私は気恥ずかしいやら、でも、嬉しいやらで緩んだ頬を引き締めることに苦労しながら公務に戻るのだった。




~ end ~