「あ、あかりちゃんを!指名で!」
俺達はその日、人生で初めてキャバクラに行った。それはまだ20代前半の頃で、街にはルーズソックスを履いたアムラーとガングロが溢れていた時代のことだ。
当時、俺はしょっちゅう下北沢で飲んでいた。小学校の時から何かとつるんでいた奴と遊んでいるうちに、そいつの専門学校の集まりの中になぜか俺も混ざり込むようになっていた。俺が新橋のラーメン屋で藤原紀香さんと出逢った頃の話である。(詳細は前のブログ参照)
飲む店はだいたい決まっていて、下北沢南口商店街を抜けて少し歩いたところにある「都夏」の二階の座敷が俺達の定位置だった。
ある時、その仲間内の一人の女子がキャバクラで働き始めた事を知る。俺はキャバクラなんて行った事も無かったし金の無いバンドマンには無縁の世界だと思っていた。だから身近な子がキャバ嬢になったのはそれなりの衝撃があったのを憶えている。
しかしそれからしばらく経って、その子がキャバクラを辞める事になった。彼女はお店の話はあまりしなかったしこちらもなんとなく聞かなかったけど、その日は珍しく「あんまり指名取れないし向いてないから辞める、、」みたいな事を言っていた。きっと大変な世界なんだろうなと想像する事は出来た。
そんな話を聞いた俺ともう一人(←仲間内で一番お調子者で声がデカい人物)は、なんだかよくわからない使命感に駆られて「俺達が行って指名してやるよ!」と言った。その子は「来ないでいいよー。」と笑ってたけど嫌がってはいなかったように見えた。これは行くしか無い。
その子がキャバ嬢として出勤する最後の日、俺達は無け無しの金をかき集めてキャバクラへ向かった。もちろん2人ともキャバクラに行くのは初めてだ。意を決してそのきらびやかな入り口をくぐった俺達は、店内のキャバ嬢とボーイ、客の全員に聞こえるように大声でその源氏名を言い放った。
「あ、あかりちゃんを!指名で!」
「ほんとに来てるし!」と笑いながら現れたあかり嬢は下北で一緒に飲んでいる子と同じ人物とは思えなかったし、その日都内で一番綺麗だった。何を話したかは覚えてないが煙草に火をつけようとしたら「それは私がやるの!」と怒られた事は覚えている。キャバクラを出たその後、俺達が安い居酒屋で反省会をしたのは言うまでもない。
なんで急にこんな話を書いたかというと、今週末に俺達の定位置「都夏」であの連中ととんでもなく久しぶりに飲むから記憶の整理をしたかったのでした。くだらない事は若さゆえの特権なのだ。
Sleeper畠山
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