コーヒーメーカーがコポコポと音を立てながら心地よい香りを漂わせている。
受話器の向うで君は、たわいのない日常の出来事を喋り続けている。
それはまるで、モーツアルトの奏でる旋律の様に僕の心に響いている。
真夜中の張り詰めた空気が君のメロディーに染まってゆくようだ。
会えずに過ごした一日が、僕の知らない君、そして、君の知らない僕を育んでいく。
そんなちっぽけな変化さえもが、僕を苛立たせる。
君の言葉が途切れた瞬間、僕は気付いた、君を愛していると・・・
その瞬間から、新たな僕の苦悩が始まる。
“愛してる”その一言で、もう今までの二人には戻れなくなる。
僕が何より怖いのは、君の“存在”を失う事。
時間の流れがまるで大河のようにゆっくりと流れ始める。
出口のない迷宮に迷い込んだ気分で僕は煙草に火をつける。
立ち昇る煙だけが妙にリアルに空間に溶けていく。
もう、戻ることは出来ない。
僕は気付いてしまったのだから。
明日、君に会おう。
そして、伝えるんだ、“愛してる”と・・・
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