ダッシュボードあたりにポイって置いてあったわんわんの携帯を、ご主人さまがホイッて放って寄越した。
「ありがと」
ん?邪魔だったかな?なんて思いながら、携帯をバッグの中にしまおうとしたら。
「検索」
「ん?」
「ホテルの空き部屋」
「あ、うん、うん!」
「空いてなかったらお泊り無しで帰りなさい」
「やーだー」
「ははっ」
いつものホテルの空き部屋を調べたら1つだけ。
ご主人さまに「急げ(笑)」って言われながら、慌てて車を走らせた。
いつものホテルの駐車場入り口が見えた時、車が1台入ってった。
「あーー!」
「…帰れ(笑)」
「やだあ」
ホテルはもう目の前だし、とりあえず駐車場に入ってく。
ホテルの入り口から、従業員のお兄さんが出てきた。
こっちに向かってくる。
運転席の窓を開けてお兄さんを見ると、ちょっと申し訳なさそうな表情。
「すみません、満室で前の車のお客様で約40分待ちです」
チラ、とご主人さまを見ると、出ろって手で合図してる。
お兄さんにスミマセンって呟いて、窓を閉めた。
ご主人さま「帰るしかないなぁ」ってニヤニヤしてる。
「やだ、帰んないもん」
「はは(笑)いいから出なよ。手前にホテルあったろ」
「あ、うん、あった」
…えと…ちょっと古めかしいホテル。
きっと中もイマイチだろうけど、どこに泊まるかなんて問題じゃないもん。
大切なのは誰と泊まるかだもん。
いつものホテルより手前のホテルの駐車場に入ってく。
どこにも満室とか空室とかの表示が無い。
仕方ないから車から降りてフロントに向かってった。
……満室。
待ってる人まで何組かいる。
ご主人さまと(ダメだね)って目くばせして車に戻った。
駐車場から道路に出るまでに車が3台入って来た。
「どんどん入ってくるね」
「なあ」
「満室なのにね」
「なあ(笑)帰るか(笑)」
あーん、ヤダよー
帰されちゃうよー