(ご主人さまだ!)
気付いた時には、もうご主人さまはけっこう近くまで来てた。
それでもわんわんは、トテテって感じで早足でご主人さまに向かってく。
「お疲れさま~」
ご主人さまはわんわんの隣くらいまで来ると、ぺちんとお尻を叩いた。
「酔っ払った」
「うん」
また、ぺちん。
「酔っ払った」
「うん」
ぺちん
「酔っ払った」
「…うん、あの」
ぺちん
「酔っ払った」
「けっこう飲んだ?」
ぺちん
「飲んだ。酔っ払った」
「…あのね」
ぺちん。ちょびっとお尻撫で撫で。
「なに」
「…お尻叩かないで」
ぺちん
「なんで」
「だって」(人がいっぱいいるもん)
ぺちん
「なんで」
「もーー」
叩こうとする手を避けるみたいにご主人さまの手を握った。
ご主人さまはそのまま指を絡めてきて、普通に恋人繋ぎみたいにナッチャッタ(カタコト)
手を繋いだまま歩き出したけど、酔っ払いご主人さまは、握ったままのわんわんの手ごとお尻をぺちんぺちん叩いてくる。
……余計に恥ずかしいんですけど。
バカップルみたいなんですけど。
ちっちゃい声で「いや」とか「もー」とか言ってるうちに、
ご主人さまの手が、叩いてるのか抱き寄せてるのか判らない動きになってきた。
ぺちんとお尻を叩きながら、腰に回してグイッて引き寄せてく感じ。
繋いだ腕ごとご主人さまの動きに振り回されて、ぺたんとご主人さまの胸元に体がくっ付いちゃうよ。
よろけるわんわんを、ご主人さまが面白そうに見てる。
じっと見てる。
(キ…キスされる…)
「…人が見てるよ…」
「んー」
だめ、完全に酔っ払い。
腰を抱き寄せられたまま、なんか上半身を後ろにのけぞらせてるわんわん。
…マヌケっぽい(笑)
マヌケっぽいけど、ちゅーされると思ったから、必死くさく避けてみた(笑)
だって、普通にすごい人混みなんだから!
お尻叩かれたり抱き寄せられたりしながらトコトコ歩き続けてて、タクシーの列にならんで、やっと足が止まった。
足は止まったけど、わんわんを抱き寄せてるご主人さまの手はそのまんま。
歩いてる時より余計に恥ずかしい。
タクシー待ちの列で、ギューギュー抱き寄せられてるんだもん、そりゃ恥ずかしい。
「わあ」
「へそ見えた」
ご主人さまが、わんわんの着てるチビTの裾をぺろんと捲った。
タクシー待ちの列にならんだまま腰を抱き寄せられて、Tシャツを捲られてるわんわん。
恥ずかしいし
恥ずかしいし
恥ずかしいよー。
「捲るから見えるんでしょ~」(ボソボソ)
「へそ」
「おヘソなんて何回も見たでしょ」(ボソボソ)
「へそ見た覚えないなあ」
「つつかないで」(ボソボソ)
「んー」
「お腹つままないで~」
ご主人さま、わんわんのTシャツの裾を捲って、おヘソのあたりをつついたり脇腹を摘まんだりしてる。
あのね
あのね
恥ずかしいだけじゃなくてね
もっと、って気持ちになってしまう。
体のあちこちがムズムズしてしまう。