「はい」
ご主人さまが小さな袋をわんわんに差し出す。
「なあに?」
「ホワイトデー(笑)」
袋を見た時からきっとそうだろうと思ってたけど、
言葉にしてもらうと、すごくこそばゆい。
こそばゆくて、うれしい。
「ありが……あっ!」
「なに?」
「こっちが先。順番逆になるとこだった」
「ああ(笑)」
わんわんが差し出した袋を見て、ご主人さまがケラケラ笑ってる。
「ありがと」
「うん。ありがと」
「ああ(笑)」
ご主人さまにチョコを渡してから、ご主人さまの手の小さな袋を受け取った。
「なに」
「なにって?」
「嬉しそうにしてるから(笑)」
「だって嬉しいもん。嬉しいなーと思ってたとこ(笑)」
「ははは」
わんわん、チョコのこと忘れてて慌てて買ってきたのに。
ご主人さまもわんわんに…って思い付いて、ホワイトデーのお菓子買ってきてくれた。
単純に嬉しいよ
嬉しいよ、そんなの。
アホチンみたいににこにこ笑って、ご主人さまとファミレスでモーニングなんて食べた。
帰る前にわんわんに時間を作ってくれてありがとう。
ご主人さまの顔を見ながら、ずっと(ありがとう)って思ってた。
「行かなくていいの?」
「そうだな」
「あのね、事故とか気をつけてね。ここ来るまでにも事故あったよ。あとガソリン渋滞」
スタンドはどこも大渋滞してた。
わんわんも家まで帰れるかギリギリくらいしか入ってない。
お会計を済ませてファミレスを出た。
昼間の11時くらい。
ご主人さまとは1時間半くらいお喋りできた。
……充分すぎる。
けど。
キョロキョロしたら、駐車場には人がいなかった。
大きな国道沿いのファミレス。
交差点では信号を待ってる人もいるけど…こっち見てない。
「えへへ」
「なんだよ」
ちゅっ、てして、すぐご主人さまから離れた。
「目的は達成した?(笑)」
「うん(笑)」
ゆうべ、『ちゅーしようと思った』ってメールしたことを覚えてて茶化された。
あはは、って笑ってたら、何も無いとこでつまづいてコケた。
コケたわんわんにぶつかって、ご主人さまもよろけた。
「なんだよ(笑)」
そう言いながら、よろけてるわんわんを抱き止めてくれた。
なんだか可笑しくて、後ろからご主人さまに抱き止められたままケタケタ笑った。
「じゃあね」
「うん。気をつけて」
ばいばいって手を振りながら、ご主人さまの車を見送った。
助手席にはご主人さまに貰ったお菓子。
早くおうちに帰って食べよう。
きっときっと、すごく甘くて美味しいはず。
あまくておいしいはず。
おしまい