「…無いな」
「…無いね」
ネットで調べた100均がある場所には、工事中の建物が1つ。
「これ…かな」
「たぶん」
足場が組んであって、工事中のシートが掛かってる建物の前で、わんわんは派手にガックリしてた。
「工事中だね」
「だなあ。しょーがない」
近くには他に100均は無かった。
ようするに、ここが駄目ならアウトな感じ。
ホントはすごくガックリしてたけど、
あんまりガックリしてると、ご主人さまを責めちゃう感じがして、声のトーンを落とさないようにした。
「二郎食べに行こ」
「そうだな」
違うとこで首輪探したかったけど、ご主人さまにはあんまり時間の余裕がない。
いま来た道を引き返して駅に向かうことにした。
二郎は少し電車で移動しなきゃなんないから。
(いいや、首輪はまた今度の時に持ってきてくれるはずだもん)
もう欲しいとか言うのヤメとこ、って思った。
電車で少し移動して、ご主人さまと二郎のラーメンを食べた。
途中でご主人さまの携帯に連絡もきた。
食べたらばいばいしなきゃ…。
駅で改札口を抜けて、階段のところでばいばいしなきゃならない。
ご主人さまが乗る電車の乗り場は左に上がってく。
わんわんは右の階段を上がらなきゃなんない。
「ここでばいばい?」
「そう。電車が来てから上がれば間に合うかな」
「うん」
「たぶん、俺のが先だな。わんわんのほうはさっき出たから」
「…うん」
「首輪買っとくから」
「…夜に帰ってくる?駅までお迎えに来てもいい?」
「それまでには用意出来ないなあ(笑)」
「だよね(笑)」
「明日は時間読めないもんね?」
「昼間で終わるか夜までになるか判らないからなあ」
「…うん」
いまばいばいしたら…もう、しばらく会えないんだ。
やばい、鼻の奥がツンとする。
涙が出る前兆。
えい!って前兆を振り払うみたいに笑って、ご主人さまの手を握った。
「えへへ」
「なに?」
「写真とっちゃう~(笑)」
駅の階段の下で、ご主人さまの手を握ってその写真を撮った。
ほとんど同時に電車の音が聞こえてきた。
「電車きた!どっちだろ」
「俺だ(笑)」
「うん」
「じゃあね」
「うん」
2人でパッと背中を向けるようにして、別々の階段を駆け上がってった。
わんわんは走る必要ない…と思ったけど、ご主人さまにつられて駆け上がった。
階段の途中でお掃除をしてるおばちゃんが
「もう間に合わないねえ」ってわんわんに言った。
わんわんの乗るほうの電車だったみたいだ。
そのまま駆け上がると、まだ電車の扉は開いてた。
滑り込みセーフな感じ。
電車の窓ごしに向こう側のホームが見えた。
ご主人さまが(そっちだったな)って顔で手をパタパタ動かしてるのが見えた。
わんわんも(こっちだったね)ってジェスチャーをして見せた。
すぐに扉が閉まって、わんわんの乗った電車がゆっくり動きだす。
ご主人さまの姿を目で追ったまま、ばいばいって手を振って見せた。
ご主人さまも手を振ってくれてた。
わんわんが手を振ると、応えるみたいに手を振ってくれてた。