首輪買いに行こう【18】左と右の階段 | 夢 出会い 魔性

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「…無いな」

「…無いね」


ネットで調べた100均がある場所には、工事中の建物が1つ。


「これ…かな」

「たぶん」


足場が組んであって、工事中のシートが掛かってる建物の前で、わんわんは派手にガックリしてた。


「工事中だね」

「だなあ。しょーがない」


近くには他に100均は無かった。

ようするに、ここが駄目ならアウトな感じ。

ホントはすごくガックリしてたけど、
あんまりガックリしてると、ご主人さまを責めちゃう感じがして、声のトーンを落とさないようにした。


「二郎食べに行こ」

「そうだな」


違うとこで首輪探したかったけど、ご主人さまにはあんまり時間の余裕がない。

いま来た道を引き返して駅に向かうことにした。

二郎は少し電車で移動しなきゃなんないから。


(いいや、首輪はまた今度の時に持ってきてくれるはずだもん)

もう欲しいとか言うのヤメとこ、って思った。


電車で少し移動して、ご主人さまと二郎のラーメンを食べた。

途中でご主人さまの携帯に連絡もきた。

食べたらばいばいしなきゃ…。




駅で改札口を抜けて、階段のところでばいばいしなきゃならない。

ご主人さまが乗る電車の乗り場は左に上がってく。

わんわんは右の階段を上がらなきゃなんない。


「ここでばいばい?」

「そう。電車が来てから上がれば間に合うかな」

「うん」

「たぶん、俺のが先だな。わんわんのほうはさっき出たから」

「…うん」

「首輪買っとくから」

「…夜に帰ってくる?駅までお迎えに来てもいい?」

「それまでには用意出来ないなあ(笑)」

「だよね(笑)」

「明日は時間読めないもんね?」

「昼間で終わるか夜までになるか判らないからなあ」

「…うん」


いまばいばいしたら…もう、しばらく会えないんだ。

やばい、鼻の奥がツンとする。

涙が出る前兆。

えい!って前兆を振り払うみたいに笑って、ご主人さまの手を握った。


「えへへ」

「なに?」

「写真とっちゃう~(笑)」


駅の階段の下で、ご主人さまの手を握ってその写真を撮った。

ほとんど同時に電車の音が聞こえてきた。


「電車きた!どっちだろ」

「俺だ(笑)」

「うん」

「じゃあね」

「うん」


2人でパッと背中を向けるようにして、別々の階段を駆け上がってった。

わんわんは走る必要ない…と思ったけど、ご主人さまにつられて駆け上がった。

階段の途中でお掃除をしてるおばちゃんが
「もう間に合わないねえ」ってわんわんに言った。

わんわんの乗るほうの電車だったみたいだ。

そのまま駆け上がると、まだ電車の扉は開いてた。
滑り込みセーフな感じ。

電車の窓ごしに向こう側のホームが見えた。

ご主人さまが(そっちだったな)って顔で手をパタパタ動かしてるのが見えた。

わんわんも(こっちだったね)ってジェスチャーをして見せた。

すぐに扉が閉まって、わんわんの乗った電車がゆっくり動きだす。

ご主人さまの姿を目で追ったまま、ばいばいって手を振って見せた。

ご主人さまも手を振ってくれてた。



わんわんが手を振ると、応えるみたいに手を振ってくれてた。