少しずつ自分を取り戻してく感覚。
ピクンと指先が動いて、その自分の動きで脳みそも動き出す、みたいな。
わたしを覗き込むみたいにしてるご主人さまと視線がぶつかった。
「帰ってきた(笑)」
「…わたし…どっか行ってた?」
「どこ行ってたんだか(笑)」
汗だくな身体がマットの上でツルンと滑る。
何やってんの、とご主人さまが笑う。
少しバツが悪い。
照れ隠しみたいにエヘヘと笑い返した。
お腹の上にはトロリとした白い液体が零れてた。
お風呂のお湯でご主人さまが流してくれてる。
「汗だく」
「うん」
さっきまで浸かってた湯舟に、ご主人さまはまた身体を沈めた。
わたしはシャワーで汗を流してた。
お湯に浸かってるご主人さまが何か歌ってる。
車の中とかでもすぐ歌うの(笑)
「あ」
「ん?なに?」
「…天城越え」
前にカラオケでご主人さまが歌ってた。
『これくらい愛されてみたいなあ』なんて言ってた。
本気じゃなくて、たぶん軽口だろう。
「天城越え?」
「うん。誰かに取られるくらいなら…♪あなたを殺して、いいですかぁ~♪」
ニヤニヤ笑いながら、わざと大袈裟に歌ってみせた。
「はは」
「エヘヘ」
「ていうかさー」
「ん?」
「あなたが『誰かのもの』でしょうが」
「…はは」
判ってること。
わたし結婚してるもん。
離婚を考えてるのと、離婚してるのとは全然違う。
タオルで水気を拭き取って、出掛けるための支度を始めた。
「あ、写真!」
「ん?」
「ゆうべ、明日一緒に撮ろうって言った!」
「ここで?(笑)」
「外で撮るの?」
「どこかいいポイントがあるだろ(笑)」
ラ/ブホ/テルのお部屋の中で、ひっそり撮るんだとばかり思ってた。
(外かぁ…)
外でご主人さまと一緒に写真を撮るのか。
そんなこと、いいって言って貰えると思って無かった。
「もう支度できた?」
「うん、大丈夫」
「清算するよ」
「うん」
靴を履きながら、お部屋の中の清算機でお金を払ってるご主人さまを待った。
今日もいい天気。
暑くなりそうだ。