激動 8海星 | 夢 出会い 魔性

夢 出会い 魔性

日記だったり思い出だったり願望だったり不倫だったり。




「…みんな…長いの?」

「だな」

「転勤前から?」

「転勤後に知り合った人はいない」

「…そか」


聞きたいことを思い付くとポツリと尋ねる。

ご主人さまがそれに答えてくれる。

それ以外の時は普通にケラケラ笑って、釣竿を引き上げて「餌取られてるー」なんて言ったりしてた。



いくつの人?

あとの2人はいくつ?

みんな独身?




時間を掛けて、少しずつ。
1つ1つを自分で消化しながら。


ご主人さまは時々は即答じゃなくて考えながら、
それも嘘を用意する…とかではなくて、ちゃんと思い出しながら、答えてくれてた。



わんわんがヒトデを釣り上げて、ご主人さまがゲラゲラ笑った。

触れなくてキャーキャー言ってた。

ご主人さまが笑いながら針から外してくれてる。

裏返ったヒトデの触手みたいなのがモゾモゾ動いてる。

海に戻したかったけど触れなくて、やっぱりキャーキャー言ってた。

「自分で釣ったんだから自分で戻しなよ」

ご主人さまが私の様子を見て「痛くないから」とか「刺さないから」とか言ってる。

触れなくて、側に落ちてた貝殻でヒトデを摘もうとするわんわん。
それを見て笑うご主人さま。

仕方ないなあ、って顔をして、ご主人さまがヒトデを海に戻してくれた。


「けっこうほったらかしになってるんだよな」

「ヒトデ?」

「そそ。海に戻されないでアスファルトの上で干からびてる」

「なんで?食べないなら海に戻せばいいのに」

「俺もそう思う。殺生する必要ないしな」

「必要ない殺生はするべきじゃない」

「なあ」



ご主人さまがヒトデを戻してくれて良かった。

そのままでいいよ、みんなそうしてるんだし…なんて言われなくて良かった。



わんわんは、このヒトデしか釣れなかった。

ご主人さまは何も釣れなかった。

でも話はたくさん出来た。

釣り糸を垂れてのんびりした時間を過ごした。

ゆっくり過ぎてゆく時間の中で、ポツリ、ポツリと話が出来た。





わんわんが話しやすい時間を、ご主人さまが作ってくれたのだ。

そう思った。