「ちょっとどきどきした」
なんだか黙っていられなくて、そう言葉を舌に乗せた。
「ちょっと?」
「…だいぶ」
「はは」
「ばれるかと思った」
堂々としてればバレない。
ご主人さまはサラリとそう言ってアクセルを踏み込む。
身体の中でちっちゃいタマゴがうごめいているのに堂々となんて出来ない。
「それに」
「なあに?」
「ばれても面白いだろ」
ご主人さまがグーに握った左手をわんわんの目の前で開いて見せた。
ボタンが1つだけの小さなリモコン。
リモコンを握るようにしながら、そのボタンを親指で押している。
「うっあ、」
「なに変な声出して」
「…だって…」
「動いてるんだ(笑)」
ご主人さまがスイッチ入れたくせに。
もじもじと太ももを擦り合わせながら、チラと運転席のご主人さまに視線を向けた。
「なに恨めしい顔してんの」
「…したくなっちゃうから」
「なにを」
「……セ/ック/ス」
「いつもじゃん。したくない時あんの?」
「ない。いつもしたい」
「知ってる」
ご主人さまが知ってるのを、わんわんは知ってる。
知ってるくせに言わされてるのも知ってる。
でもそれが何だか嬉しいの。変かな。
仕方ないなあ、って言われたのかな。
ご主人さまは独り言みたいに言ってから、
リモコンをドリンクホルダーに置いてわんわんの太ももを手の平でなぜた。
それだけのことなのに、ビクンと全身に電流みたいなのが走る。
「弱っち」
「…なんで?」
「判りやす過ぎる(笑)」
ビクンとしたのが簡単にバレてた。
太ももをさわさわなぜているご主人さまの腕に手を伸ばす。
右手を絡み付けて、それから左手も。
そのままご主人さまの肩の辺りにポテンと頭を預けてしまう。
何だか安心して、身体の力がふにゅふにゅ抜けて行くのを感じた。
信号で停まると、ご主人さまはわんわんのほうに視線を落としてきた。
意識なんてしなかったけど、きっとおねだりの視線を向けていたと思う。
口唇が触れて、またビクンと電流が走った。
もじもじしている太ももの奥のほうが、ぎゅうってタマゴを締め付けてる。
触って欲しくなってる。
舌が入りこんで来た隙間から、溜息みたいな音が零れた。
「はい時間切れ」
「はっ…あ、」
スルンと舌を抜いて、何でも無かったみたいにご主人さまは車を走らせた。
身体の中のタマゴはまだぶるぶる震えていて、
ご主人さまの口唇が離れたら余計に切なくて欲しくなった。