前の日はご主人さまは本社の新年会だった。
駅までお迎えに行って、車の中でご主人さまにイタズラされて、
その後でご主人さまとラーメン食べた。
いろいろ話しをしているうちに、ご主人さまはこんなことを言ったのだ。
「俺も早く子供作らないとなあ」って。
ご主人さま…子供欲しいって前にも言ってた。
自分のDNAの跡取りが欲しいって。
本気で切羽詰まったような口調じゃなかったから、わんわんはちょっと笑って、
自分の口に手をあてて、ナイショ話みたいにお返事した。
「作っちゃおうか(笑)」
ばーか、とか
なに言ってんの、とか
そんな風に言われると思ったのに。
「俺は全然構わないよ」
そう言われて、胸の奥のほうがズキンって痛くなった。
お前の好きにすれば?って、突き放されたようにも感じた。
欲しいなら勝手に育てれば?って言われたみたいに思ったのだ、たぶん。
あとは単純に、え?いいの?って驚き。
…作れない原因はわんわんにあるのだから、いいの?も何もないや…
そんな胸の痛み。
「ハタチで63歳かあ。頑張んないとだなあ(笑)」
あ、なんか違う。
勝手にすれば?って突き放されたんじゃない。
もし出来たら頑張んなきゃって、そう言った。
「頑張んなきゃだね(笑)」
「男しか生まれないぞ(笑)」
「なんで?」
「すぐいくから(笑)」
ご主人さまはチャーハン食べながら、わんわんをアゴでクイッと指した。
「いくと男の子が出来るっていうもんね(笑)」
「な(笑)」
『誰だか相手は判らないけど自分の子供』じゃなくて、
わんわんとの子供前提に話してくれてる。
やばい。鼻の奥がツーンとしてる。
考えちゃいけないことなのに。
嬉しくて切なくて、ラーメンが胸に詰まってゴホゴホしちゃいそうだ。
「中に出しちゃうよ」
ゆうべの会話だって、本気じゃないこと判ってる。
いまだって、「いきそうだから、このままだと中に出しちゃうよ」って意味だと思う。
それでも「うん」とも「ダメ」とも言えなくて、
ご主人さまを自分の身体から抜いた。
すぐに抜けなかったのは、私自身のこころの迷いだと思った。
トロ、と流れ出した液体を舌で掬い取りながら、ご主人さま自身を口の中におさめた。
ごくん
飲み込んでから、ご主人さまのお腹の上に零れてしまった液体も舌で掬いとった。
ぜんぶきれいに舐め取りたかったの。
ぜんぶ
ぜんぶ、わたしのからだのなかに、おさめてしまいたかったの