昨日、「超大型」台風接近の中、衆議院議員選挙の投票日を迎えました。

暴風雨が強まらないうちにと9時前に投票所に向かったのですが、もうすでに傘が飛ばされそうな風が吹き始めていました。

深夜から未明にかけて台風が通り過ぎる中、報道は選挙速報一色でした。

政権与党の勝利が確実と伝えられる中、大和川が氾濫水位に達し「避難勧告」発令、

兵庫の実家周辺にも「避難準備・高齢者等避難開始」が出ました。

近年経験しなかったほどの荒々しい暴風が、一晩中吹きすさびました。

 

第二次世界大戦前、ユングJung,C.G.は、「ヴォータンWotan」(1936)という、

詩的な小エッセイを発表しています。

ヴォータンとは、ゲルマン神話の主神で、嵐、暴風の神。

日本神話にも、スサノオという複雑な性格の神が登場します。

スサノオ神話の前半での、大暴れして高天原を荒らして破壊する姿から、

スサノオは台風を現しているのではないかとの説もあります。

 

第二次世界大戦、ヨーロッパをファシズムの大嵐が過ぎ去った後、

ユングは再び、「破局の後でNach der Katastrophe」というエッセイを書きます。

 

…….その病理学的な兆候をあげるならば、自分の性格に対する完全な盲目、自己愛的な自画自賛や自己の美化、同胞へのさげすみとテロ、みずからの影(みずからは自覚していない負の性質)の他者への投影、嘘による現実の歪曲、“格好だけ”や見栄っ張り、はったりやいかさま等々、… (中略)…もっと詳細に診立てるならば、空想虚言(Pseudologia phantastica)といえるだろう。つまり、自分の嘘を自分で信じ込むという特殊な能力で知られる、ヒステリーの一形態である。

                 (『ユングの文明論』松代洋一編(1979),思索社,pp.44-45,抄、一部訳語変更)

 

これは精神科医ユングに依るヒットラーの病跡学的診断ですが、自らが率いる組織を自滅に向かわせるタイプの人々に今も共通する特質ではないかと思われます。

 

「個人とちがって群衆は一旦動き出せば、人間の統制は及ばない。そしてそのとき(ヴォータンの)元型が動き始める(前掲書,p26)

 

歴史は幾度も幾度も繰り返す。

その虚しさを受け容れ、「永劫回帰」をことほぐニヒリズム....抑うつの慢性化。

 

嵐の中降臨したスサノオ元型が、この国でも、いよいよ始動するのでしょうか….。