河合隼雄さんは、ユング心理学を日本に広くひろめた臨床心理学者でした。

晩年は文化庁長官を務めてられましたが、ちょうど10年前に亡くなりました。

「心理療法は、宗教と科学の接点にある」と指摘したのが河合隼雄さんでした。

スピリチュアルな癒しと心理療法が深く関係していることは、他にもたくさんの人たちが様々な立場から言っています。

河合隼雄さんが、臨床心理士という民間資格を、国家資格にしたいと願って政治的に矢面に立って闘ってこられたことは、よく知られています。

 

一昨年、公認心理師という日本初の心理カウンセラーの国家資格が誕生しました。

ですが、この資格は、河合隼雄さんがかつて目指したものとは違っていました。

それは、公認心理師は、「医師の指示に従う」義務が定められているからです。

 

つまり、公認心理師は、医療現場での心理職の地位の安定を目的とした医療心理師の資格を求めていた別団体の案に、臨床心理士が呑み込まれる形で成立したからです。

 

公認心理師という一度取れば資格名を一生名乗れる国家資格ができると、5年ごとの更新免許制の民間資格「臨床心理士」を取り続ける人は、減っていくことでしょう。

それとともに喪われていくものがあると、わたくしは気がかりに思っています。

 

公認心理師は、現在主流の生物学的精神医学に基づく治療(薬物療法、通電療法)や身体拘束を含む監護を行う精神科医療保健福祉の、お医者さんがトップに君臨する支配システムで、患者さんやその家族に<支援という名の支配>をする中間管理職の地位を確保するでしょう。

 

そこで、なにが抜け落ちていくのでしょうか。

3,11を契機に、「臨床宗教師」という民間の資格ができて、日本臨床宗教師会が有力な宗教団体と宗教学研究者の応援で設立されました。

 

臨床心理士の使命として河合隼雄さんが目指したもの。それは、

「宗教と科学の接点・その間にある心理療法」でした。

公認心理師は、「科学」的なケアに軸足を置きます。

宗教臨床師は、「宗教」的なケアに軸足を置きます。

では、これから、臨床心理士は.....いったいどうなっていくのでしょう。

 

 

 

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