風呂上がり
ベランダに足を投げ出して
指先を広げてみる
風が心地いい
めまぐるしくまわる日常が
ほんの少しスピードを落としてくれて
久しぶりに自然を感じた
音楽をきいた
これもまた久しぶりだ
すごいなぁ
音楽は心を豊かにしてくれる
ベランダに出た
Tシャツの中を風が泳ぐ
いいじゃないか立ち止まったって
後ろを振り向いたら
誰かが遅れてやってくるかもしれない
その人が両手で抱えている荷物を
片方だけ持ってあげるんだ
ほら、手を繋いで歩いてゆける
そっちの方がずっと素敵じゃないか
僕は小学6年生になった
「昨日取り上げた俺の靴どこ置いたの?」
「ちゃんと場所教えたわよ。まあ、アンタ寝てたけどね」
ニヤニヤしながら保母さんは言った
あいかわらず、保母さんのあたりはキツイけれど
こんな僕も戦えるようになっていた
「おい!早く行こうぜ!」
同じ年の子が僕をうながす
「今行くよ!」
今日はクリスマスだ
一年に唯一この日だけ
ケーキを食べられる日
僕らはかけ足で
食堂に向かい
自分の席につく
「俺チョコレートケーキがいいな」
「え、でもイチゴついてないじゃん」
そんな話をしながら
そわそわしていると
窓の向こうに
人影がみえた
トナカイだ
僕は駆け出した
途中、どうしたんだと言われたような気がしたけど
それどころじゃない
あの時のトナカイがいた
乾燥室を抜け
勝手口から外へ出て
一瞬怯む
雪だ
知らないうちに
雪が積もっていたらしい
僕は裸足で駆け出した
あの日と一緒だ
彼が角を曲がるのが
みえて
一目散に走った
あの頃よりも
ずっと早く
力強く
角を曲がると
彼はポストの前を
通りすぎていた
僕は自分のポストの前に行く
今ではもう背伸びをしなくても
届くポストだ
彼はどんどん遠くへ歩いてく
おもむろに
自分のポストを開けた
しわしわの新聞紙の 切れっぱしが入っていた
涙がポロポロと溢れだした
彼は
彼は僕が手紙を書かなくなった今でも
毎日ポストを見に来てくれてたのだ
彼の背中がどんどん小さくなってゆく
ありがとう
降りしきる雪の中
彼の背中を見送った
「昨日取り上げた俺の靴どこ置いたの?」
「ちゃんと場所教えたわよ。まあ、アンタ寝てたけどね」
ニヤニヤしながら保母さんは言った
あいかわらず、保母さんのあたりはキツイけれど
こんな僕も戦えるようになっていた
「おい!早く行こうぜ!」
同じ年の子が僕をうながす
「今行くよ!」
今日はクリスマスだ
一年に唯一この日だけ
ケーキを食べられる日
僕らはかけ足で
食堂に向かい
自分の席につく
「俺チョコレートケーキがいいな」
「え、でもイチゴついてないじゃん」
そんな話をしながら
そわそわしていると
窓の向こうに
人影がみえた
トナカイだ
僕は駆け出した
途中、どうしたんだと言われたような気がしたけど
それどころじゃない
あの時のトナカイがいた
乾燥室を抜け
勝手口から外へ出て
一瞬怯む
雪だ
知らないうちに
雪が積もっていたらしい
僕は裸足で駆け出した
あの日と一緒だ
彼が角を曲がるのが
みえて
一目散に走った
あの頃よりも
ずっと早く
力強く
角を曲がると
彼はポストの前を
通りすぎていた
僕は自分のポストの前に行く
今ではもう背伸びをしなくても
届くポストだ
彼はどんどん遠くへ歩いてく
おもむろに
自分のポストを開けた
しわしわの新聞紙の 切れっぱしが入っていた
涙がポロポロと溢れだした
彼は
彼は僕が手紙を書かなくなった今でも
毎日ポストを見に来てくれてたのだ
彼の背中がどんどん小さくなってゆく
ありがとう
降りしきる雪の中
彼の背中を見送った
おじいさんが
お前は覚えが悪いだの
何を言ってもすぐ忘れてしまうなど
おばあさんの方は、どうやらおじいさんの事も忘れてしまったみたいで
どうして自分がこんなに怒られなきゃいけないのだと
怒ってた
僕は後ろを振り向いて
「どうにかできないの?」と、聞くと
首を横に振った
次の日
僕は、施設のお兄さんに服を隠されてしまい
昨日の服を着ていた
「お前は臭い」
「こっちに来るな」
と言われ
僕はまた例の場所でいじけていた
泣いて火照った顔を雪にうずめた
気持ちいい
顔を上げると
人影がみえた
あのトナカイだ!
僕は見失わないように
一生懸命走った
するとトナカイは、
昨日とは違う方へ歩いてゆく
息を切らしながら
必死についてゆくと
そこは郵便ポストの前だった
郵便ポストと言っても
例の赤いやつではなく
施設の児童専用のポストだ
一人一人それぞれの専用のポストが
ずらっと並んでいるのだ
普通、小学低学年は
一番下の段なのだが
僕は背伸びをして
指先がやっと届く
真ん中の段だった
これも、嫌がらせなのだ
いつの間にか
トナカイは消えてしまっていて
僕は自分のポストを
あけてみた
落ち葉が一枚
ひらりと落ちてきた
彼が入れたのだろうか
そこで僕はサンタさんの事を思い出した
サンタさんに自分の欲しいプレゼントを書いて
郵便ポストに入れると
メッセージカードと一緒に
プレゼントを渡しに
来る話
そうだ、手紙を書こう
彼が読んでくれるかもしれない
それから、毎日手紙を書いた
いじめられてる事
今日は泣かなかったとか
木こりのお兄さんと山へ行ったよとか
友達ができたとか
彼は読んだというしるしに
よくゴミをポストに入れてくれた
あめ玉の袋とか
チョコレートの銀紙
石が置いてあった事もあった
それから月日はどんどん流れて
施設にも馴染んだ
おじいさんと
痴呆持ちのおばあさんが
もう一度恋に落ちて
近所のみんなで
ささやかな結婚式をしたり
木こりのお兄さんは
あいかわらずニコニコしている
僕は、野球を始めたり
僕のまわりにも
人が居てくれるようになって
トナカイの事なんかすっかり忘れてしまっていた
お前は覚えが悪いだの
何を言ってもすぐ忘れてしまうなど
おばあさんの方は、どうやらおじいさんの事も忘れてしまったみたいで
どうして自分がこんなに怒られなきゃいけないのだと
怒ってた
僕は後ろを振り向いて
「どうにかできないの?」と、聞くと
首を横に振った
次の日
僕は、施設のお兄さんに服を隠されてしまい
昨日の服を着ていた
「お前は臭い」
「こっちに来るな」
と言われ
僕はまた例の場所でいじけていた
泣いて火照った顔を雪にうずめた
気持ちいい
顔を上げると
人影がみえた
あのトナカイだ!
僕は見失わないように
一生懸命走った
するとトナカイは、
昨日とは違う方へ歩いてゆく
息を切らしながら
必死についてゆくと
そこは郵便ポストの前だった
郵便ポストと言っても
例の赤いやつではなく
施設の児童専用のポストだ
一人一人それぞれの専用のポストが
ずらっと並んでいるのだ
普通、小学低学年は
一番下の段なのだが
僕は背伸びをして
指先がやっと届く
真ん中の段だった
これも、嫌がらせなのだ
いつの間にか
トナカイは消えてしまっていて
僕は自分のポストを
あけてみた
落ち葉が一枚
ひらりと落ちてきた
彼が入れたのだろうか
そこで僕はサンタさんの事を思い出した
サンタさんに自分の欲しいプレゼントを書いて
郵便ポストに入れると
メッセージカードと一緒に
プレゼントを渡しに
来る話
そうだ、手紙を書こう
彼が読んでくれるかもしれない
それから、毎日手紙を書いた
いじめられてる事
今日は泣かなかったとか
木こりのお兄さんと山へ行ったよとか
友達ができたとか
彼は読んだというしるしに
よくゴミをポストに入れてくれた
あめ玉の袋とか
チョコレートの銀紙
石が置いてあった事もあった
それから月日はどんどん流れて
施設にも馴染んだ
おじいさんと
痴呆持ちのおばあさんが
もう一度恋に落ちて
近所のみんなで
ささやかな結婚式をしたり
木こりのお兄さんは
あいかわらずニコニコしている
僕は、野球を始めたり
僕のまわりにも
人が居てくれるようになって
トナカイの事なんかすっかり忘れてしまっていた
