しばらく泳ぐと、そこには海草に覆われ、海水で錆びた古い船があった。
ここだ。ここに、あの魔女はいる。
「魔女、いるんでしょ! 出てきて!」
「なんだいうるさいね。おや、珍しいお客さんだ。 確か、アリエルのお姉ちゃんだったね。
最後にあったのは、確か……お前さんの父さん、トリトンの葬式の時だったかねぇ」
綺麗に整った顔立ちと、中性的な声。
私でも見とれてしまうほど美しいのだけれど、なんだか怖い。
アリエルはよくいつもこんな人に会ってるなと、少し感心してしまったが、今はそれどころではない。
「そんなことはどうだっていいわ。あんたに聞きたいことがあるの」
「なんだい」
「アリエルを戻す方法。あんたなら、知ってるでしょ」
魔女は、すこし驚いて、それから。
「もしかして、王子が結婚する事になったのかい?」
「そうよ! あんたがアリエルを人間にしたせいで、あの子は死にかかっているのよ」
私が答えると、魔女は困ったような、悲しそうな、複雑な顔をした。
なんだというのよ。
「一つだけ、方法があるにはあるよ」
しばらくして、魔女はそう言った。
それから、両手を私に向けて差し出す。
そして、小さく何か呟いた。呪文か何かだろうか。
すると、泡が光り輝いて手に集まっていった。
それは見る見る内に形作り、光が消えると、そこには沢山の宝石がはめ込まれた綺麗な短剣があった。
「結婚式の日、アリエルがあの王子の心臓をこれで刺せば、あの子は人魚に戻れるよ」
「本当!? 本当なのね!!」
私は、うれしかった。
これで、アリエルは生きていられる。そして、また一緒に暮らせる。
「本当だよ。あたしは嘘は吐かないからね」
「わかったわ! さっさとそれ頂戴!」
「おちつきなさいな。まだ、話は終わっちゃいないよ」
私は、内心早くして欲しいと思いながら、その続きを待つ。
「アリエルがかならずしも助かるとは限らない」
「なんでよ。その剣、偽物? 嘘吐かないってのは、嘘?」
「いやいや。あたしは嘘は吐かない」
じゃあ、なんだと言うの。
私は、声に出さずに心の中で思った。
魔女はどこか悲しそうに俯いて、ゆっくり言葉を紡ぐ。
「あの子は、アリエルは、あの王子を刺さないかもしれない」
考えても見なかった答えだった。
確かに、それだとアリエルは泡になってしまう。
けど……。
「それは、ありえないと思うわ」
魔女は、私を見た。
先ほどのような悲しそうな顔はしていなかった。
「まぁ、今言った事を覚えておきなさいな。その場合の覚悟もしておいた方がいいね」
「わかったわ。で、それ早く頂戴」
「せっかちだねぇ」
こんな時に落ち着いていられる方がどうかしている。
「対価は、お前さんの自慢のその髪だ。いいかい」
「いいわよ」
私は、即答した。
アリエルの為なら、心臓だってくれてやるつもりだ。
たった一人の妹、たった一人の家族。
お父様がなくなったときから、私が守るって決めてるから。
ここだ。ここに、あの魔女はいる。
「魔女、いるんでしょ! 出てきて!」
「なんだいうるさいね。おや、珍しいお客さんだ。 確か、アリエルのお姉ちゃんだったね。
最後にあったのは、確か……お前さんの父さん、トリトンの葬式の時だったかねぇ」
綺麗に整った顔立ちと、中性的な声。
私でも見とれてしまうほど美しいのだけれど、なんだか怖い。
アリエルはよくいつもこんな人に会ってるなと、少し感心してしまったが、今はそれどころではない。
「そんなことはどうだっていいわ。あんたに聞きたいことがあるの」
「なんだい」
「アリエルを戻す方法。あんたなら、知ってるでしょ」
魔女は、すこし驚いて、それから。
「もしかして、王子が結婚する事になったのかい?」
「そうよ! あんたがアリエルを人間にしたせいで、あの子は死にかかっているのよ」
私が答えると、魔女は困ったような、悲しそうな、複雑な顔をした。
なんだというのよ。
「一つだけ、方法があるにはあるよ」
しばらくして、魔女はそう言った。
それから、両手を私に向けて差し出す。
そして、小さく何か呟いた。呪文か何かだろうか。
すると、泡が光り輝いて手に集まっていった。
それは見る見る内に形作り、光が消えると、そこには沢山の宝石がはめ込まれた綺麗な短剣があった。
「結婚式の日、アリエルがあの王子の心臓をこれで刺せば、あの子は人魚に戻れるよ」
「本当!? 本当なのね!!」
私は、うれしかった。
これで、アリエルは生きていられる。そして、また一緒に暮らせる。
「本当だよ。あたしは嘘は吐かないからね」
「わかったわ! さっさとそれ頂戴!」
「おちつきなさいな。まだ、話は終わっちゃいないよ」
私は、内心早くして欲しいと思いながら、その続きを待つ。
「アリエルがかならずしも助かるとは限らない」
「なんでよ。その剣、偽物? 嘘吐かないってのは、嘘?」
「いやいや。あたしは嘘は吐かない」
じゃあ、なんだと言うの。
私は、声に出さずに心の中で思った。
魔女はどこか悲しそうに俯いて、ゆっくり言葉を紡ぐ。
「あの子は、アリエルは、あの王子を刺さないかもしれない」
考えても見なかった答えだった。
確かに、それだとアリエルは泡になってしまう。
けど……。
「それは、ありえないと思うわ」
魔女は、私を見た。
先ほどのような悲しそうな顔はしていなかった。
「まぁ、今言った事を覚えておきなさいな。その場合の覚悟もしておいた方がいいね」
「わかったわ。で、それ早く頂戴」
「せっかちだねぇ」
こんな時に落ち着いていられる方がどうかしている。
「対価は、お前さんの自慢のその髪だ。いいかい」
「いいわよ」
私は、即答した。
アリエルの為なら、心臓だってくれてやるつもりだ。
たった一人の妹、たった一人の家族。
お父様がなくなったときから、私が守るって決めてるから。