※人魚姫を元にいろいろ構造しちゃった話。王子様サイドです。

 毎週金曜日更新。

 瞬きをする一瞬。景色が変わった。
 船の甲板と、側面が同時に見えた。
 体が打ちつけれれたかと思った次の瞬間、視界が歪んだ。

 揺ら揺らとゆれる船の明りが、綺麗だと思った。
 目の前が真っ白になる。
 沢山の泡で視界がふさがれる。
 泡は、一気に明りに向かって消えていった。
 急に息が苦しくなる。
 落ちた。
 意識が急速に遠退いていくのを感じながら、俺はその事実にようやく気がついた。

 夏の生暖かい風が、一瞬にして体を突き抜けた。
 先ほどから、少し風が強くなってきている。
 空は晴れ渡り、星がいくつも輝き、それだけがこの日を祝福してくれているかのようだった。
 今日は、俺の誕生日だと言うことで、船上パーティを開いていた。
 甲板の隅で、王室の音楽隊が演奏をしている。
 それにあわせ、皆が笑顔で踊っている。
 俺は一人甲板の片隅で波の音を聞きながら、その様子を見ていた。
 本当に俺の事を祝おうと思っている奴なんて、一人もいない。
 皆ただ歌って、踊って、騒ぎたいだけ。
 毎年やる事は同じだし、正直こんなものなくてもいい。
 俺がそんな事を思いながら、甲板の楽しげな様子を眺めていると、背中が勢いよく叩かれた。
 振り返らなくても解る。王子である俺をこんな風に叩く人間なんて、この世に一人しか居ない。
 カイト=フォース。親衛隊隊長であり、俺の剣の師でもある男だ。
 俺は、カイトが苦手だった。
 カイトはいつものように大きな声で――彼にとっては普通の声だが、周りにとっては騒音に近い――言う。
「なぁ、エリック! おめぇは踊らねぇのか!? お前の誕生日なんだぜ、思う存分楽しめよ!」
「私は結構ですよ。ダンスはあまり好きではありませんので。それより、仕事はよろしいんですか?」
 俺は、首だけを動かしてカイトを見た。

 彼は明らかに気分を害したようで、眉をひそめた。
「ちゃんとしてるさ! けどよ、仕事ったって、何かが起こらない限りは、突っ立ってるだけだしさ!
 早く家帰りてぇよ、まったく!」   
「それで、何か用ですか?」
 素っ気無く俺が言うと、彼が相変わらずだな、と彼にしては小さな声で、普通の人の平均的な大きさの声で言ったのが聞こえた。
「用なんてねぇよ! 暇だっただけだ! 居ちゃ悪いか!?」
 彼がそう言った直後、風が強さを増し、船が傾いた。
「うわっ」
 俺は、バランスを崩し、船を滑り下りていく。
「くそっ! エリック!!」
 カイルが俺に駆け寄ってくるのが一瞬見えたが、次の瞬間には俺の目は空を映していたかと思うと、
 船の側面が見え、甲板からの明りが宙に浮かんでいる見えた。
 俺は、無意識のうちにその明りへと手を伸ばすが、手にはなんの感触もなかった。
 落ちた。
 その事に気がつた時には、既に視界が海水で歪んでいた。
 空気が泡となって海に消え、俺は意識が遠退いていった。


To be continued……