「お前さん………」


「コッチでは…久しぶり、かな?阿伏兎」


面の下から出てきた顔は、阿伏兎にとって見知った顔であり、神威にとってはかなり近い人物の顔だった。

若干口調も変わり、阿伏兎のこともあぶさん、ではなく阿伏兎、と呼んでいる。

性別は女。突然の神威の訪れを待つ……ソラだ。


「やっぱり、ソラだったか…」


阿伏兎は店員がソラだったということに気づいていたようだ。

苦笑して頭を掻いた。


「あれ、気づいてたの?」


「団長は気づいてたかどうかは知らんがね、そりゃ分かるさ。いくら暗い時間帯にしか此処に来た事がないっていっても、店の外装ぐらいは覚えてられる」


「なるほど…そりゃそうだね」


「……お前さん、俺たちが今日来るってことが分かってたのか?」


偶然とはいえ店を休業にすることでゲームに集中できる環境を作ったり、人生ゲームをさっさと持ってきたりするなど、妙に準備の良いソラに阿伏兎は少し違和感を覚えたらしい。

だがそんなことをソラが分かるわけもない。ソラは否定した。


「…ソラ、お前さん何を考えてるんだ?

団長と神楽をわざとペアにしたりして……」


ソラの考えていることが分からない阿伏兎。

今皆がいるこの場所で、神威に素顔を見せたくないはずなのに、何故見られる危険があることをわざわざ自分から行ったのだろう。

しかも神威と神楽両方に見せなければいけなかったかもしれないのだ。

まだ自分から「人助けだ、兄さんだけには見せてやる」と言って神威だけに見せた方が良かっただろうに。

また、人生ゲームではわざと神威と神楽をペアにした。

くじを引くとき、ソラは神威と神楽意外の3人に小声で言ったのだ。

「兄妹同士をペアにする」

銀時、新八、阿伏兎、ソラが引いたくじには何も書かれておらず、神威と神楽のにだけは番号が書かれていたのだ。

だから神威と神楽を後に引かせた。何も書かれていないくじを引かれては台無しになってしまうのだから。

そして結果的に、銀時&新八、ソラ&阿伏兎、神威&神楽のペアが生まれたわけだ。


「……どうもね、何とか…できてしまった深い溝を埋めたくなるんだよ。たまに、一人でいる神威を見るとすごい後悔してる気がしちゃってね…。

そんなの、私のただの勘違いとか、思い込みかもしれないけどね。

たまに、神威を見てるとね…寂しそうに見えるんだよ。

……だからホラ、ゲームで少しでも仲良くっていうの?

阿伏兎気づいた?神楽が神威を"兄ちゃん"って呼んでたの」


「………」


「もうちょっと……平和だったらいいんだけどねぇ」




「オーイ!お前等まだかー!?」


銀時が、ソラと阿伏兎を呼ぶ。

顔を見せるだけだ、そんなにかからないはずの割には時間がかかってしまったのだろうか。

ソラは再び面をつけた。


「さて…戻るか、あぶさん」


店員と阿伏兎は、銀時たちの元に戻った。









――甘味屋からの帰り道……


銀時と新八・阿伏兎は、両手に二つずつ箱を持っていた。

罰ゲーム…というわけではないが、ルールとして、この店で1、2、3番目に高い商品を買わなければならなかったのだ。

結果、銀時や新八だけでは持ちきれず、阿伏兎にも鉄だってもらっているのだ。

一方、神威と神楽はというと……


「スー……」


神楽は神威の背中で、ぐっすりと眠っていた。

今日の人生ゲームではしゃいただめ疲れてしまったのだろう。

甘味屋を出た直後から既に神威におぶってもらっていた。

そして気づけば眠りについていた、というわけだ。

神威の表情はいつもと変わらない笑顔…だが、その表情はいつもの飄々としたものでも、人を殺すときに浮かべるような笑みではく………和らかな、兄の表情――…。













*終わり*