
昨年(2011年)11月に、陽史明氏の最新著作「最新四柱推命理論『四柱推命・実践と理論』」が、刊行されました。
B6判203ページと、小さくて薄い割りに価格が高く、「実践 四柱推命」と内容がカブル部分もあるので、書店で手に取りながらも購入を躊躇していたのですが、
当ブログで「陽理論」の解説を書き始めたこともあり、やはり、このたび買っておくこととしました。
まだまだ、ザッと目を通したばかりですが、
部構成は、ほぼ「実践 四柱推命」を踏襲しており、
第一部は、十干十二支の基本的な説明と干同士、支同士、干支間の生剋幇、命式中の干支の数値化と生剋幇による力量変化と、
「陽理論」を理解する上での基礎的な知識の説明となっており、
第二部は、実例を使って生剋幇による力量変化の解説、格や用神、位相、調候の解説、事象の見かた、
最後に「解命」として、大運での喜忌を含め総合的な鑑定結果(「要点を絞って」ということですが)が記載されています。
と書くと、この本だけ読めば、ある程度、「陽理論」に沿った推命が身に付くかと思われるかもしれませんが、
実際は、記述レベルに濃淡があって、説明されていないことも多く、
この本だけで「陽理論」を修得するのは困難だと思います。
あくまで、「陽理論」による推命の雰囲気を楽しむ程度だと考えられた方がよいと思います。
(このことは、他の陽氏の著作でも同じことが言えます。と言いますか、占い系の書籍ではある意味当たり前のことかもしれませんが……)
「記述レベルに濃淡があって」と書きましたが、たとえば、
命式中の力量変化の数値については、
干合、剋、冲、支合については記載されていますが、
洩、生受、幇についての数値の記載はありません。
また、解冲時の数値については、
土性支以外の日支-時支間のケースしか記載なく
土性支関与のケースや月支関与のケースの記載がありません
それから、月支の基本数値ですが、
「最新四柱推命理論」や「実践 四柱推命」では、
グレーゾーンでの数値の記載があったのですが、
この本では、記載されていません。
この本には、そもそも干支暦が付いていないので、よく分かりませんが
「グレーゾーン」という考え方は、放棄されたのでしょうか?
長くなってきましたが、あと少しだけ……
このブログでも取り上げた「干合でない方の陰干と陽干の剋」ですが、
「実践 四柱推命」と同じく「無効」の剋、「効果なし」としています。(P.38~P.42)
それでは、「最新四柱推命理論」の第三章推命散歩での
「丁が庚を鍛えるらしい」とか
癸が「時には丙を曇らせる」とか
いう記載は何なのでしょうか?
「丁が庚を鍛える」という考えは、
「造化元鑰」、「窮通宝鑑(欄江網)」で言われている「丁火煅金」のことでしょうけれど、
陽氏著の「窮通宝鑑」第四項 三秋庚金(P.291)では、「窮通宝鑑」の訳として、
「申月庚金、…中略…専ら丁火の煅金を用とします」とあり、その直後に陽氏の持論として
「丁火では煅金できない」と「窮通宝鑑」の論を否定しています。
「最新四柱推命理論」出版時(2002年)には、「丁が庚を鍛えるらしい」と否定し切れなかったものが
「実践」を通じて、「無効」なことが証明されたため、理論修正したということでしょうか?
いずれにせよ、現在は、基本的には、「干合でない方の陰干と陽干の剋」は「無効」という立場のようです。
あと、命式の実例が61掲載されているのですが、出来れば全ての実例に、修正数値と喜忌は載せて欲しかったですね。
とりあえず、まだ第一部をザッと見ただけなので、これくらいにしておきますが、
また、他の話題の中でも折に触れて、この本のことも解説していきたいと思います。