元お義母さんへ。

いつも、海外まで手紙をお送りいただきありがとうございます。

「貴方が私の息子と離婚したと聞き、しかも、海外へ行ってしまったと突然聞かされた時から、暫くは、眠れない日々が続いていました。」


お義母さん、ごめんなさい。
4人目にできた彼女の胸に飛び込み、

本物のお嫁さんになったからです。

小さい頃から、自分が結婚するなんて夢にも思っていませんでした。
他人事だと思っていました。
自分には関係ないことだと思い、夢にも思っていませんでした。

お義母さん、私、あなたの息子さんとは初婚でしたが、本当は、
偽物のお嫁さんでした。

本当は結婚していなかったんです。
書類上だけ、結婚が存在してました。

 

お義母さんの手紙には「わがままな息子に育ててしまってごめんなさい。」

とありましたね。

わがままなのは実は私なんです。

 

あなたの息子さんはとても良い人です。

離婚直前、あなたの息子さんにこう伝えました。
「好きな人が出来ました、彼女と結婚したいと思ってます。なので、私と離婚してください。」


彼は、心から「おめでとう、本物の結婚が出来るんだね、本当に良かったね。僕達の分も、幸せになって。」と
言ってくれました。

離婚にあたり、役所、保険、色々な書類を手配してくれました。
私が「本物の結婚」を出来る事を心から喜んでくれました。

彼も含め、私達は本当の結婚を望んでいて、出来ないから。
ずっと、私も、暗闇の下で、隠れて愛を育む予定でした。

あなたの息子さんは、自分の戸籍にバツが一つ付いてヨゴレてしまうのもお構いなしに、
スポットライトがあたる私の本物の結婚を、スポットライトの当たらない世界の中から、
祝福してくれてました。

お義母さんが泣いている間に。


お義母さん、悲しんでいる時に、私は私の世界の友人たちに祝福されていました。
ごめんなさい。

10代前半の頃から、影の世界でずっと生きてきました。

20代以降になると、同僚や上司は、酒の肴に、気持ち悪いホモの話を面白そうに笑っていました。
その横で、気づかれまいとして、普段以上に女性らしい格好をして出勤している私は、
居心地が悪くて息が詰まりそうで、食物も飲み物も喉に通りませんでした。
すべて、噛まずに飲み込んでしまうような状態でした。

仲間が笑いものにされている。
私も。
いつも。

仲間たち、私、私の愛する彼女も、笑いものにされる話題が出るたびに、そういう言葉を聞くたびに、息が浅くないり呼吸が出来ませんでした。
絶望的になりました。
キモい、ありえない、触られたくない、一緒の空間にいたら、逃げ出すね、
そういう言葉を沢山、聞いてきました。
息ができませんでした。


若い頃、死んでも良いと思っていました。
このままスピードをあげて、車のブレーキを踏まなければ、
気付いたときには、あの世に行けてるのかな、
あの世には、偏見がなく、自由があり、愛した魂と一緒にいれるのかな、
と考えてました。



お義母さんはご存知ないかと思いますが、私の偽旦那さんの周りには、
自分であの世に旅立った人たちが、何人もいます。

私も彼も、闇の世界に住んでいる私たちはみな、一度は考えたことがあると思います。
あの世のこと。

お義母さん、お元気にしているようで、私は少し安心してます。
私も会いたいです。

お義母さんは、脚が中々上がらないから、玄関の階段で

躓くのではないかと、心配です。
一人暮らしでは寂しいのではないですか。

息子さんはしょっちゅう来てくれますか?
ご飯はきちんと料理できていないんでしょう?
出来合いのお惣菜を食べているんですか?

息子さんの本当の旦那さんは、とても綺麗好きで、料理がとても上手で、
優しく、お義母さんと一緒に暮らしても、全く問題がない彼なんです。

でも、彼の旦那さんを紹介したら、
お義母さんが、心臓発作で倒れてしまうのを、私たちは恐れています。

偽の結婚でしたが、彼のあんなに温かい家族、親戚に驚き、
冷たい親戚関係に育った私にはカルチャーショックでした。

あの世に行った時に、お義母さんと、親戚の皆さんに改めて、
本当の私を自己紹介させてください。

気持ち悪がられますか?
怒りますか?
どちらも当たり前でしょうね。

あなたの息子さんの彼も、そして、嫁の被り物をかぶっていた私の、愛した彼女も、
それぞれ、とても良い人です。

息子さん含め、皆、スポットライトの外側の暗闇から、
笑顔で、私の本当の結婚を、応援してくれています。

私たちはスポットライトの下に、
おもちゃで作った「夫婦」生活がありました。

スポットライトから外れた、暗闇に、
誰にも知られない本当の家庭がありました。

DINKSと呼ぶのでしょうか。夫婦だけの家庭。子供のいない。

夫婦ではないですね、夫夫、婦婦。

彼には10年生活をともにしている彼が、私には15年、生活を共にしている彼女がいました。
私の本当の配偶者は、頭の回転が早く、気性が穏やかな10才年上の、落ち着いた人でした。

あなたの息子さんの本当の配偶者は、気配りがよく効く人で、おしゃれ好きで、会話が上手です。
癒し系でしょうか。

私達夫婦は、別の所に住まいがあり、同性二人だけの、小さな家庭を、大事に大事にしていました。

社会の偏見、両親の期待、近所の噂、職場での勘ぐり、それに潰されそうになり、
悩みに悩んだ人たち、悩みすぎて病みに取り憑かれた人達の出会いの場で、
あなたの息子さんと、そして、私が、6年前に
出会いました。

息子さんは、私の偽旦那さんお見合い探しの「候補3人目」でした。
私は彼にとって、「偽お嫁さん候補1人目」でした。


お義母さん、私はこういう隠さなければいけないことが多くて、
そのために、昔から、本気で自分の事を話せず、友達が少なかった。友達を無くしていました。

でも、お義母さんは、そんな私にとても優しくしてくれました。
だから、罰当たりと言われても、今でもお義母さんの事を、心の友だと慕っています。

離婚した後にも関わらず、お手紙、いつもありがとうございます。
今は、私には愛する妻がいます。
新婚です。気性が荒いじゃじゃ馬のような妻です。


彼女は今度、本を出版するそうです。
私達の結婚とは全く関係のない本です。

 

その本からは私達の結婚はわからないでしょう。
なので、周りの人は、横に、同性愛者が立っているなんて、夢にも思っていないでしょう。

今の本当の結婚に関して、お義母さん、私は言うつもりはありません。
あなたの息子さんへの思いを汚したくないから。

そして、なによりも、一人で年老いていく貴方の健康、精神が心から心配だからです。

息子さんがなぜ、年をとって行かれるお義母さんと一緒に暮らせないのか、
私もなぜ、一緒に暮らしたくても暮らせなかったのか、
亡くなってから、あの世で、息子さんと私から、説明します。

私たちには、誰にも言えない、愛する長年の伴侶が横にいました。

お義母さん、一緒に暮らせたらいいですね。