全日空B737与圧低下事故 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 全日空のB737-800が与圧トラブル。
乗客の鼓膜が破れるという事故があった。
 
 『Aviation Wire』社の記事によると、 

高度約5000メートル上空で、コックピットの

計器に機内の気圧低下を示す警告が

出たため引き返し、羽田で機体を点検

したところ、左右のエンジンに1系統ずつ

ある空調システムの両方に不具合が

発見されたという。機内の気圧はこの

システムなどでコントロールしている。

ANAによると、通常は自動制御しているが、

トラブル発生時にパイロットがシステムを

手動操作したところ、警告は消えたという。

 (引用ここまで) → 記事全文


 

 何のためにわざわざシステムを2重に

装備しているんだか… それが両方

同時に壊れるって、天文学的な数字では?
B737の旧シリーズには、確かに与圧

系統の欠陥があったが、「New Generation」

と呼ばれるこのシリーズの機体では改良

されていたはず。しかも2月に受領した

ばかりの新造機のシステムが両方同時に

故障したとなったら、世界中のB737NGは

一旦運航停止で総点検の必要すら出て

くるはずだ。それくらいの深刻な事態。
 
 旅客機には「PACK」と呼ばれるシステムが
搭載されている。これは「Pressurization

and Air Conditioning Kit」の略で、エンジン

からの高温高圧の圧縮空気を用いて機内の

空調や与圧のコントロールを行うシステム。
 
 飛行機が地上にいるとき(=エンジンが

停止しているとき)には、機体尾部にある

「APU」と呼ばれる補助エンジンから圧縮

空気を得て機内の空調を行っているが、

エンジン始動時にはこのAPUからの
空気を全てエンジン始動に使うため、

機内のエアコンが一旦停止する。(飛行機が

出発する時に、一瞬機内が静かになるのは

そのため)
 
 エンジンが始動すると、今度はエンジン

からの強力な圧縮空気が供給されるので、

APUからの空気の供給は必要なくなり、

全エンジンが始動した段階でAPUは停止

される。
 
 コックピットでの作業の流れでは、エンジン

始動前のチェックリストでPACKを切り、

APUからの圧縮空気を全てエンジンに回す。

そして始動後のチェックリストでPACKを

エンジン側に繋ぐという手順がある。
 
 万が一、この手順を忘れてPACKを

APU側にしたままAPUを切り、離陸して

しまったら… 機内は与圧されないまま

飛行機は上昇することになり、富士山の

高度を越えたあたりから機内に不具合が

出始めてもおかしくはない。
 
 もしかして、PACKの不具合で与圧が

抜けたのではなく、始めから与圧されて

いなくて、それに気づいて慌ててPACKを

ONにして客室を急激に加圧したから
乗客の鼓膜が破れたのでは?
 

 全日空側の説明でも

  「パイロットがシステムを手動操作

   したところ、警告は消えたという。」

となっている。「主導に切り替えて」ではない。

OFFをONにすりゃ警告は消えるわな…


      …まさかね?