軽井沢のバス事故、卒業を前にした
多くの若い命が失われた。センター
試験の休講日を使ったスキーツアー
だったみたいだ。学生達にとっては
「安い」ということはこの上もない魅力
だったのだろう。
しかし、その「安さ」の根幹は、安全を
軽視してコストを削ったバス会社の運行
体制にあった。規制緩和以来、新規の
参入が増え、ドライバーの奪い合いに
なっているという業界、安い請負料金で
経営を維持するには、管理を甘くし、
多少の「規格外」に目をつぶらなければ
人が集まらないかったのだろう。しかし、
その悪循環が悲劇を生んだ。
航空業界も似たようなもの。雨後の
筍のように次々と誕生するLCC、この
業界も今はパイロットの確保が課題と
なっている。安い給料でコキ使うわけ
だから、パイロットの質の維持は重要な
安全の鍵になるわけだが、結果として
安全性の不備や、規定の飛行時間を
満たしていない者がパイロットとして
発令されてしまうなどの不祥事が多発
している。海外のLCCでは死亡事故も
起きている。
運輸業界だけではない。「安ければ
いい」を真っ先に掲げる消費者が
はびこっていることが廃棄食品横流しの
背景にあるといっても過言ではなかろう。
質の高い運転士や操縦士、食材は
それなりの値段がする。「安い」の裏には
何があるのか? 手に取る前に、申し込む
前に、ちょっと考えてみればそのリスクも
わかろうものだろう。
軽井沢の一件は今の日本を象徴する
氷山の一角のように思う。「良さ」や「安全」
よりも「安さ」を優先事項にする消費者、
それに迎合する商人。
「安かろう」は「悪かろう」に通じる。そして
いつかは民族の品位までも奪い去っていく。