離陸と着陸 | PTD ~ Pilot To Dispatch ~

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ヒコーキオヤジのひとりごと
 空の話、ときどきタイのネタ…

 この仕事をしていると、珍しい業界だから
なのか、空の世界についていろいろな質問を
いただくことがある。突拍子もないものもあれば、
教官の私でも「なるほどねぇ…」と唸ってしまう
ようなユニークな切り口のものまで、結構
楽しませていただけることが多い。
 
 先日のある会合では、こういったご質問をいただいた。
 
   「離陸と着陸ってどっちが怖いですか?」
 
 この質問をくださった方の真意は、離陸とは、
安定に足を地面につけた状態から何もない大空に
舞い上がっていく状態。着陸とは空中を三次元に
動き回っていた物体を滑走路といういわば「点」のような
場所で二次元に戻すという行為。どちらがパイロットとして
怖いですかというもの。
 
 …う~ん、個人的には空中に浮いている間が
一番怖いのだが(笑)

 「私個人の感覚として」と前置きして

      お答えしたものは 「離陸」
 
 これは、感情的に怖いというものではなく、
むしろ機械的なもの。燃料は満載、機体は
最大離陸重量に近い。エンジンの出力を
最大限に使用するのは実はこの離陸の瞬間だけ。
(離陸から上昇に移るとエンジンの出力は
離陸出力から上昇出力まで絞られる) 
浮いたばかりでは高度は低く、速度も十分に
取れていない。(エンジンの出力を加速よりも
高度を稼ぐために使っているため) このような
状況下ではひとつのミスや小さな機械的故障も
大事故につながる可能性が極めて高い。だから
私は怖いというよりもむしろ機械的な故障を
心配しながら離陸操作を行っている。
 
 着陸は、機械的というよりもパイロットのエラーの
ほうが事故の原因になりやすいフェーズで、
機械的な故障が起きてもそのまま降りるしか
ないので、緊張はするものの、それほど怖さを
感じたことはない。むしろ集中していて気がついたら
降りていた… という感じ(笑) もちろん、セスナといえども
1トン以上ある物体を時速100キロ以上でコンクリートに
叩きつけるわけだからちょっとでも操作を誤れば
即大事故につながる。それでもあまり恐怖を感じた
ことがないのはやはり滑走路という狭い場所に機体を
誘導するように集中しているせいなのか…
 
 もちろん、他のパイロットの方々はそれぞれ
違うお答えをお持ちかもしれない…
 
 
 
それではまた… m( _ _ )m