エピソード30「いつもの様にだまされてアメリカへ」
エピソード30「いつもの様にだまされてアメリカへ」
3つの仕事のうち、ロスに3ヶ月シルクの制作をしてから、モンテカルロへ行けばいい都合よく考えていると、ちょうどそのタイミングに合わせるように、ロスの画商から、頻繁に“招待旅行”の国際電話がかかってきた。しましには、ロスの画廊主が、パリにきて、ボクらを食事に招待し、渡米を懇請した。
とにかくロスに来てほしい。3ヶ月の間に、シルクを制作しながら、個展の準備をし、その間、ユウがパリからロスに来ていることを宣伝する。もちろん期間中の宿舎、車は提供するし、滞在費などの費用は一切持つ、というものだった。
そのとき、彼は、「渡航費は?」と聞いた。ボクは内心、いくら招待旅行だって飛行機代くらいは立て替えてやらあ、どうせ後で清算してもらうんだから、という気持ちをこめて、「うん、あるよ」と胸を張った。
単細胞のボクは、友人たちに、「ロスからのインヴィテーション(招待)があるから、3ヶ月ばかり留守にするよ」なんて、大得意に吹聴して回り、由美子を連れて、ロスに発った。
パリを出発する時、画廊に電報を打っておいたが、ロスの空港には、迎えの人影はなかった。「おかしいな?」ボクは首をかいしげたが、何かの手違いだろうとひとり合点した。「アメリカのことなら大丈夫!まかせとけ!」と見栄をはった由美子の手前もある。ここで、ジタバタしてはみっともない。とはいえ、ホントは、電話のかけ方ひとつ知らないんだから、今夜はとりあえず宿をとり、明日、画廊が開店するころ、連絡を取ればいいさと、のんきに構えていた。
なにしろ、スポンサー付のタダ旅行というアタマだから、200ドルしか持ち合わせがないので、モーテルに泊まった。次の日、モーテルのフロントに頼んで画廊に電話をかけてもらうと、画廊主はやってきたが、「オー。ソーリー。知らなかった」とケロリ。この時点で気が付いていれば、まだマシだったんだが、お人好しのボクは「お好きなアパートを探しましょう。当座の費用もご用立てしますよ。必要なものはドンドン画廊のツケで買って下さい」という結構ずくめの相手の言葉を100%真に受け、心ウキウキ大ニコニコだったのである。
