その夜アルムとリーアの家の食卓には、
カエデの故郷であるガルディンの田舎街、
大和(ヤマト)の郷土料理と彼女お得意のいなり寿司がこれでもかと並べられていた。
明らかに3人分どころか5、6人分はあるだろう。

「いや、なんというか...よくこんな量の食材持ってきてたな」
割烹着姿のカエデが振り向いて笑いながら首を振る。
「あ、この食材なら今日帰りに夜市で買ったか頂いた物なんです」
「は?この量全部か?」
「はい。そもそも食材は持ってきていなかったんですけど、なぜかおまけしてくれたりサービスしてくれたので」

俺は肩をすくめる。
「せっかくだしメルと親父さんも呼ぶか。
セルティは城にいるし明日の準備もあるだろうからな」
カエデは両手を合わせてはしゃいだ。
「いいですね!わたしも久しぶりにお会いしたいです!リーアさんももうすぐお帰りなんですよね?」

「ああ、今日は明日の打ち合わせ込で団長会議があったからな。時間的にももうすぐ...」

「おお、いい匂いがすると思ったら、
キュートな狐巫女さんがいるではないか!」
家に入ってくる気配も見せず、いつの間にか
お袋が目の前のカエデをきつく抱きしめていた。

「ん〜!ん〜!!
「お袋、その辺にしとけよ、カエデが窒息するって」
やっとお袋は手を離した。
「はは、すまなかったなカエデ。
久しかったもので、ついつい舞い上がってしまった」

「い、いえ!わたしもまたお会いできて嬉しいです!お元気そうで何よりです!」


それから少し後、父親は用事で来れないというメルフィスを迎えつつ、
賑やかな夜食と談笑を楽しんだ。


さらに夜更け、
起きているのは俺とお袋だけになったという時に、おもむろにお袋が口を開いた。
「明日の記念式典、カエデと一緒に行くんだろ?」
「ああ、そのつもりだけど」
「私から守衛には話しておくから、明日は普段討伐依頼で使っている真剣の武器を持っていってくれ。
あとカエデにも、杖を持っていくように伝えておいて欲しい」
「真剣って、明日はただのパーティみたいなものなんだろう?何で...」

俺はそこで押し黙った。
お袋がいつになく凄みを帯びた真顔をしていたからだ。
「分かった。カエデには明日伝えておく。」
「頼むぞ。私は兵舎に戻る。
明日は色々と忙しくなりそうだからな。」


お袋を送り出した俺は首をひねった。
いくらなんでも記念式典の用意は
前日の今日に終わっていそうなものだ。
騎士副団長でもあるお袋の立場ならしょうがないかもしれないが、
さっきの言葉と、国王の急な話も気にかかる。

疑念を振り払い、俺は2人に続いて床についた。





兆候は十分あった。
この時気づくことが出来れば、もしかしたら変えられたのかもしれない。





そう「今」は思っている。