翌日夜、
リトア城 建国記念式典式場

お袋から聞いていた時間に
リトア城の式場を訪れた俺とカエデは、
豪華な装飾と食事、そして出席者の数の多さに圧倒されていた。

「凄い人の数ですね...
皆さん招待された方々なんですよね?」
「ああ、ここまでとはな...」
客の出で立ちからしてほとんどは
貴族の人間だろうか。
おまけに様々な種族の者たちが揃っている。

「アルム!カエデさん!」
聞きなれた声に振り返ると、メルフィスが駆け寄ってきた。
「2人とも今来たんだ?」

「ああ、最初は国王の式辞の前に来るつもりだったんだが、お袋にこの時間に来るように言われてな。それに...」

「それに?」

「いや、なんでもない」
国王から昨日伝えられた奥義の指南の話を言いかけた俺は、咄嗟に口を噤んだ。

「メルさんは式辞の時から?」
「うん、ほとんどは建国記念についてだったけど、後でまた重大な知らせがあるって言ってたよ」

「重大な知らせ?」
「詳しくは私も分からないけど、その時は王子様も
一緒にお見えになるんだって」

メルフィスに聞いた話ではまだそれまで1時間くらい時間があるようだった。

俺たちはまた後で落ち合う約束をし、立食もそこそこに式場を後にした。

式場を出て長い廊下を進んだ突き当たり、
お袋の部屋でもある団長室に来るよう言われていたからだ。

「うーん...」
廊下を進む中1人首を傾げているカエデに俺は言った。
「どうした?何かあったのか?」
「いえ、ちょっと気になったことがあって...
さっきの式場の事なんですけど、
貴族の方々はともかく、各国の要人の方々が1人も見えなかったので、なんでだろうって思ったんです。専用のテーブル等も見当たらなかったですし」

「確かにな...
でもお前の所のガルディン王は王政が忙しいからと書状を送っていたんだろ?
他の国も同じなだけじゃないか?」

「そうですかね?わたしも最初そう思ったんですけど、それにしても居なすぎるなと思ったので...
それに...」

そこまで言ってカエデは背中に背負っている
錫杖をちらと見た。
「武器の携行の件か...」
城の兵士なら分かるが、俺たちは招待を受けた
一般の市民に過ぎない。
「警備を頼まれた記憶は無いしな。
お袋は何のために許可を..
まあ、直接聞けばいいだろう。」
「そうですよね。すいません、変なこと気にして」

会話を終えて歩く俺は、
強い胸騒ぎを覚えていた。

お袋はこんな物騒な冗談を言う人ではない。
本当に使うような事にならなければいいんだが...

いつしか団長室はすぐ目前にまで迫っていた。