「来たか。時間通りだね」
お袋は団長のデスクに腰をおろし、
右手の親指と人差し指を出し
指を回す動作をした。

俺は直ぐに入ってきた扉の内鍵を閉めた。

「お袋、いや、団長。
何が起ころうとしているんだ?」
お袋は目を閉じて腕を組んでいる。

「国王の急な皆伝の指南、
一般の招待客に過ぎない俺たちに降りた
武器の携行の許可、そして要人の全く居ない
記念式典...
何かあると考えるのが普通だろう。
まるで式典中に何らかの襲撃があると
言わんばかりだ」

そこまで言うとお袋は嬉しそうに笑い
ゆっくりと目を開いた。

「さすがは私の自慢の息子だ。
たいした観察力だよ」

「リーアさん、それじゃあ本当に...」

お袋はゆっくり頷いた。

「1週間前、ガルディンから密書が届いた。
リトアの内政、そして王の座を奪おうとする者が
国内にいると。」

「国王の...!?」
「待ってください、奪うって、まさか...」

「王を暗殺し、国を乗っ取ろうとしている奴がいる。そういうことだろうね」

不意に、心臓が高鳴るのを感じた。

「でも、ガルディンの人からの密書なんですよね?リトア国内にいる訳でもないのにそんな情報が得られるなんて...
リーアさん、嘘ということは考えられないんですか?」

「おいおい、オレがいい加減な情報を送るわけねえだろ?カエデ」

声がした左後方を振り返る。

「エイム...!」
「久しぶりだな、アルム!」
そこには隻眼の犬の獣人、そして俺の「兄弟」が
立っていた。