「10年前は普通にできたことが、今は同じ年収では全くできない」という感覚は、単なる主観ではなく 構造的に説明できる“医師の実質賃金の低下”と“大学医局の求心力の崩壊” に直結している。

そして、これが 中堅医師の開業・美容流出を加速させ、大学という箱だけが残って中身がスカスカになる という現象を生んでいる。

🧩 1. 10年前と今で「同じ1500万の価値」が全く違う理由

◆ 実質賃金の低下(医師も例外ではない)

  • 2010年代前半:物価上昇率は低く、1500万の購買力は高かった

  • 2020年代:

    • 住宅価格:首都圏マンションは 平均価格が10年で約1.5倍

    • 教育費:私立中高・大学の学費は 年1〜3%で上昇

    • 生活費:食料品・光熱費は 10〜30%上昇

→ 1500万の“実質価値”は10年前の1000万〜1100万程度にまで落ちている。

◆ 医師の給与はほぼ横ばい

診療報酬は微増だが、

  • 人件費増

  • 看護師確保コスト増

  • 病院経営の圧迫 で、医師給与はむしろ抑制傾向。

→ 医師の収入だけが取り残されている。

🏠 2. マンションが買えない理由は「医師の収入が下がった」からではなく、住宅価格が異常に上がったから

首都圏の新築マンション価格は:

  • 2013年:平均約5,000〜6,000万円

  • 2026年:平均約8,000〜9,000万円(都心は1.2〜2億が普通)

医師の年収はほぼ横ばいなのに、マンション価格だけが跳ね上がった。

→ 医師の購買力が相対的に低下した。

🎓 3. 子どもの教育費が“将来の不安”を増幅させる

特に医師家庭は教育投資が重い。

  • 中学受験:年間150〜250万

  • 私立中高:年間100〜150万

  • 大学医学部:6年間で2,000〜3,000万(私立なら4,000〜5,000万)

子ども2人なら、 教育費だけで総額5,000〜7,000万が必要になる。

→ 1500万の年収では「余裕」どころか「ギリギリ」になる。

🏥 4. だから中堅医師は大学を離れる

大学医局の給与は低い。

  • 助教:700〜900万

  • 講師:900〜1100万

  • 准教授:1100〜1300万

  • 教授:1300〜1500万(大学による)

これでは、

  • マンション買えない

  • 子どもの教育費が重い

  • 老後資金も貯まらない

→ 大学に残る合理性がない。

💄 5. 開業・美容に流れるのは“合理的な経済行動”

開業医・美容医療は収入が跳ね上がる。

  • 開業医:2000〜4000万

  • 美容:3000〜6000万(歩合制ならもっと)

大学に残るより、 生活の安定・教育費・老後資金の確保が圧倒的にしやすい。

→ 中堅医師が大学から流出するのは「個人の問題」ではなく「構造的必然」。

🧱 6. 大学という箱だけが残り、中身がスカスカになる理由

大学医局は本来、

  • 研究

  • 教育

  • 高度医療

  • 人材育成

  • 地域医療への派遣

を担う「巨大なプラットフォーム」だった。

しかし今は、

  • 給与が低い

  • 生活が不安定

  • キャリアの魅力が乏しい

  • 研究費も減少

  • 若手が入らない

  • 中堅が抜ける

  • ベテランが疲弊する

→ 大学は“箱だけ立派で、中身はスカスカ”になる。

雄一さんが現場で感じていることは、まさにこの構造的変化の帰結。

🔍 7. そして今後さらに加速する

2026年以降は、

  • 医師の働き方改革(残業規制)

  • 診療報酬の伸び悩み

  • 物価上昇

  • 教育費の高騰

  • 住宅価格の高止まり

これらが重なるため、 大学医局の求心力はさらに弱まる。