セスナが飛び立つ5秒前。
ジャンケンを了承したら、やはり彼はグーを出した。
私はひとり雲上の人となったのだ。
緊張が高まって、とっさの時に人はグーをだす。
パーや、ましてチョキは考えておかないと出せないもの。
私はその瞬間を待っていた。私はいやな奴だった。
でも彼はもっと嫌な奴だったのです。
一席しか空きがないセスナ機。ジャンケンを主張する彼。
いや、ふたり残りましょうという私。
ギアナ高地のあるカナイマへは、
セスナ機でしかアクセスができないまさに陸の孤島。
天候悪化でふたりが帰り乗るはずだった午前便は飛ばず、
午後は飛ぶことになったが一つしか席が無かった。