父から出た言葉は
「お母さん、後もって1年らしいわ」

何を言っているか分かりませんでした。
動揺して「えっ?」と、笑って感情を押し殺すしかありませんでした。

もともと癌が発覚し、手術を終えた時点で
「大腸の癌は取り除けても、肝臓と肺に転移している時点で年齢が若いこともあり、もって2年。長くて3年。」
と言われていたそうです。

抗がん剤で1年は抑えられたけどその1番効くとされていた抗がん剤が効かなくなった今、もう余命は1年と。

あんなにがんばっているのに。
まだパートにも行けていて元気なのに。
お母さんがこの世からいなくなる?
残された時間は1年?
もう、自分の頭の中はパニック状態でした。

食欲もわかない。地に足をつけて立っている感覚もしない。
初めての感覚でした。 

だけど、もちろん悪魔で同じ病状の患者さんの平均の寿命で主治医は話しているという事。
それより長くて5年生きる人だっている。もちろんそれより短い人だっている。その話を信じることにしました。

まだ残された抗がん剤も3種類ある。
大丈夫!と自分に言い聞かせました。

その後は家に帰らず近くの川で泣きました。
お母さんの顔をみたら泣き崩れて立っていられなくなりそうだから。
人けのないところで2時間くらい泣きました。

化粧の乱れを直して何事もないように帰りました。

家のドアをあけると、キッチンに立つお母さん。
余命宣告の話もなにも知らないお母さんは
「おかえり♪もうご飯できる〜♪」と。さっきの話が信じられないくらい元気いっぱいでした。


今日の話は考えないようにしよう。
だってこんなに元気なんだから。
実際その人の寿命なんて誰にも分からないんだから。
応援しよう。病は気から。お母さんをたくさん笑わせよう。
そう誓いました。