術後6日目(入院8日目)

首と頭が痛い。
もしかして髄液漏れではと心配になったが、
看護婦さんに聞いた髄液漏れの頭痛の症状とは
少し異なる気がした。

元々、昔から首に過度の緊張がかかると、
我慢できないほどの首の痛みと
頭痛がする時があった。

術後数日寝たきりで、
久しぶりに起き上がったから、
痛みが出てきたのかもしれない。


朝食後、
主治医のM内先生が回診に来てくれた。
首の話もしたが、手術とは関係がなさそうだった。

それよりも、驚いたことに、
2日後にMRIを撮って、問題がなければ
週末に退院して良いという許可が降りた。
予定より2-3日早い退院だ。

当初の予定していた入院日数は2週間だった。
しかも最低でも2週間で、
延びる可能性もあった。

恐らく、
娘の入園式があると伝えたことを覚えていて、
早めに退院できるよう配慮してくれたのだった。
週末退院ならば、入園式に参加できそうだ。

週末まであと5日。
今はまだまだ歩行に心配があるので、
退院までにリハビリを頑張ることにした。



8日目(入院10日目)
病室のあるフロア内は歩行器無しの許可が出たが、
フロア以外は、いまだに歩行器を使用している。

早く歩けるようになりたいと気持ちは焦るが、
コンビニに行く時など、
荷物を歩行器にかけられるので、
便利は便利だ。

脚の麻痺はというと、
歩行時のつま先のあげにくさ、
地面の蹴りにくさは、
術前と変わらないか、それより少し動かしにくいレベルだ。

元々、主治医からは、
手術の目的は、今後の麻痺の予防であるため、
すでに出現している麻痺は治らない可能性が
あると説明を受けていた。

その説明の通りで、
術後、脚の麻痺のレベルは変化しなかったが、
トイレに時間がかかるという
排尿障害はかなり良くなっていた。
これだけでも、十分ありがたかった。

しかし、その日、
回診に来てくれたリハビリの先生から、
意外な話を聞いた。

リハビリ医「脊髄の先生と説明が違ってしまうかもしれないけれど、
神経の圧迫が取り除かれているので、
半年ほどかけたら良くなる可能性も大いにありますよ。」

そうなのか。
麻痺が軽減されるならば、
それはとてもありがたい。
少しは期待しても良いのかもしれない。


午後になり、MRIを受けに外来病棟へ行く。

もう何度も受けているので、
苦手だったMRIも、
問題なく受けることができるようになったが、
念の為、狭いところが苦手だと、
技師さんに一言伝える。

外来と違って、入院患者は、
待ち時間少なくスムーズに検査を受けられて、
あっという間に終わった。


夕方、遅めの時間にM内先生が回診に来てくれた。
帰り際、腰のドレーン跡につけた
ホチキスをとりましょうと言いかけて、

「あ、やっぱりやめた。念の為明日にしよう。」と呟いて部屋を出ていった。

腰のドレーンを抜くときも、
他の先生はそろそろ抜いても良い言われる中、
もっとカラカラになるまでと言っていた。
やはり慎重な先生なのだろうと思った。



術後9日目(入院11日目)
M内先生に、今回行われた手術の詳しい話を聞いた。

胸椎の脊髄が飛び出ていた箇所は、
二重硬膜になっていたそうだ。

二重硬膜の図はこちら↓

 

 


そして、普通、硬膜は1mm程度だが、
それが3mmほどに肥大化していた。

手術中、飛び出た脊髄を丁寧に剥がして元の場所へ戻し、
最初に切った硬膜を縫い合わせ閉じようとしたところ、
神経の電気モニタリングが弱くなってしまった。

神経に異常信号が出てしまったので、
人工硬膜を入れて中を広げてから硬膜を縫い合わせたそう。

それから、昨日撮ったMRIの画像をプリントアウトして渡してくれた。
画像を見ると「く」の字に曲がっていた脊髄は
まだ少し癖がついているが、
綺麗に硬膜内に収められれいる。

その背面には、白い塊があり、
髄液が溜まっているそうだ。
これが数ヶ月かけて自然に吸収されていくとのことだった。



退院日が早まったこともあり、
退院を目前にして、不安も出てきた。

ここ数日、背中の痛みが強かったので、
相談をした。

傷のあたりを診てくれて、
恐らくコルセットによる圧迫が原因である可能性が高いとのこと。

万が一、髄液漏れだとしても、今はどうすることもできないので、
様子を見るしかないそう。

また、人工硬膜についても、気になることがあったので質問してみた。
将来的に人口硬膜に脊髄が癒着して、
また麻痺が発生したりはしないだろうかが、
心配だった。

先生の説説明によると、
可能性がないわけではないが、
将来的にどうなるかは分からない。
ただ、今現在そう言った兆候が出ているわけでもないし、
ひとまず心配する必要はない。

確かにそうだ。
手術は成功したのだ。

将来的にどうなるかなんて、分からない。
むしろ、健康な身体であっても、
数年後何か問題が起こる可能性もあるのだ。

今は、神経が圧迫されているという問題が解決されたのだから、
必要以上に恐れず、それを素直に喜ぼう。



術後10日目(入院12日目)
退院日だ。
迎えに来た家族が、トボトボ歩いている私を見て驚いていた。

入院中、状況は伝えていたが、
面会ができなかったので、
私が、もっと何かにしがみつかないと歩けないレベルだと思っていたようだ。

荷物を運んでもらって車へ向かう。
雨が強く降っていたが、
不思議と外は明るく感じた。

桜の花びらはすっかり少なくなって、
緑の葉が、雨に濡れて綺麗に光っていた