進学校の優劣を知る目安として「東京大学の合格者数」が示されることが多い。しかし時代の変化とともに、もはやそれも指標ではなくなりつつある。

 日本人は東大が好きだ。毎年この季節になると、週刊誌が大学合格者ランキングを掲載。進学校の浮沈を示す指標には、東大合格者数が使われてきた。ただし最近は、「東大一辺倒」の風潮に変化がみられる。

 一つには、長引く不景気の影響で医学部人気が高まっていることが挙げられる。東大に行くより医学部に行ったほうが将来が安心という現実的な価値観だ。十分に東大を狙える学力がありながら、あえて医学部を目指す高校生は増えている。これを勘案せず、東大合格者数のみで学校の浮沈を語るのは危険だ。

 たとえば鹿児島のラ・サール。2008年以降東大合格者ランキングトップ10から外れることが増えたため、“凋落(ちょうらく)”などと言われるが、国公立大医学部合格者数では、ほぼ毎年トップ3内である。東大合格者数減は、08年のリーマン・ショックの影響ととらえることもできる。

「脱・学歴社会」の流れから、相対的な東大のブランド力も下がっている。東大にこだわる必要はないと考える生徒や保護者が増えてきていると、複数の有名中高一貫校進路指導担当者は証言する。特に西日本では、「わざわざ東大に行かなくても近場の京都大学で十分」という考え方が強い。不況の世相ではこの傾向はさらに強まるだろう。

 東大にとらわれない自由な発想の生徒が多い学校ほど、今後、東大受験者数は減っていくはずだ。当然合格者数も減る。だからといって、その学校の教育の質が低下しているとは言えない。むしろ多様な大学に生徒を送り込むことのできる高校のほうが、これからのダイバーシティー社会においては実質的な存在感を発揮するとも考えられる。