櫻葉のお話
BLなのでご注意ください
高校に入ってから出会った雅紀からの、猛アプローチを受けて
『じゃあ…付き合うか?』
根負けして出たその言葉から気付けば5年の歳月が流れていて
順風満帆…て訳でもなく、時にはケンカもしつつすれ違いそうになる事もあったけど。
それでも今も一緒に居るのが答えだと思う訳で
俺はひとつのケジメを着けようと決めていた
「へぇ、翔くんついに実家でんの?」
「おう。就職するしいい切っ掛けだよな」
「まーと暮らすんじゃなくて?」
「……お前さ、人の恋人にその呼び方やめろよ」
「ふははは!ケチくさいねぇ?減るもんじゃないのにさ」
「潤が言うと何か減る気がすんだよな」
「何でだよ!」
目の前で文句垂れる潤を宥めながら、にやにやした顔でこっちを見るニノに思わず顔を歪める
こいつにはバレてんのが癪なんだよな…
「まぁまぁ、心配しなくても潤くんの予想は当たってんのよ」
「え!て事はやっぱ…?」
「じゃないと、家事なんか一切できない翔やんが実家離れする訳ないじゃない」
「確かに…あ!でもさ、家政婦要因で一緒に住む事を考えてるなら最低だからね」
「えぇ?暮らす前からモラハラ疑惑?」
「おい!誰がモラハラだ!!」
「え?家政婦要因で一緒に暮らすんじゃ…?」
「ちげぇわ!!もう5年経つしそろそろかなって思ったんだよ!」
「え?プロポーズ?」
「翔くん、ちゃんと指輪用意しときなよ?」
「……ねぇ、お前らほんとやだ」
人の決意を面白半分に茶化す2人に溜め息を吐くと震えたスマートフォン。
〝 じゃあ夜に翔ちゃんの家に行くよ😄 〟
雅紀からの、いつもと変わらない何ともないメッセージを受け取って
今日、俺が「一緒に住もう」と言っても
きっといつもみたいに人懐っこい笑顔で
『 しょーちゃん!だいすき!! 』
そう言って喜んでくれるだろう。
そう信じて疑わなかったのに
雅紀から出た言葉は
「しょーちゃん、オレたち別れよう」
想像もしてないものだった。
「は?え…突然なに……」
「オレ、留学するんだ」
「…留学?」
「うん。アメリカの方にね、先生の紹介で受け入れてくれる人が居て…そこで勉強して来たらどうかって」
「ちょ、ちょっと待って。留学って何…てかそれが理由で別れるのか?」
予想外の言葉が次から次に襲ってきて、頭の中も感情も何もかもが追いつかない
…留学なんて初めて聞いたぞ
「遠距離になるから、無理かなって」
「勝手に決めんなよ!ンなのやってみねぇとっ…」
「2年」
「え?」
「今の段階で、2年は向こうで頑張るつもり。そこからまだ勉強したいってなったら、伸びる可能性だってあるよ?」
「2…ねん……」
「しょーちゃんだって、これから就職して自分の時間もろくになくて…って生活になるでしょ?」
「それは…」
「しょーちゃん、きっと自分の事だけじゃなくてオレの事も気遣って負担になっちゃうから。それはイヤだよ」
困ったように笑うその姿には、ショックさよりも吹っ切れた感…というか何だか未練がないように見えて
それがまた俺にショックを与える。
「……何でお前はそんな平気そうなんだよ…」
「ん?」
「っ、何だよお前!あんだけ俺の事、好き好きつってたクセに…そんなもんだったのかよ!!」
「しょーちゃ…」
「別れても未練がないくらいのもんだったのかよっ!!!!」
悔しさなのか悲しさなのか、どちらかも分からない気持ちで握り締めた拳をそのまま
テーブルの上に叩きつけると、響いた大きな音とジンジン痛む両手。
あんなに好きを伝えてくれてたのに…!
「そうだよ」
「…え?」
「オレは、しょーちゃんの事が大好きだからいっぱい伝えたよ。好きも大好きも」
「……」
「振り向いて欲しいから、断られても諦めなかったし諦められなかったから頑張った。オレは最初からしょーちゃんに対して全力だったよ」
「雅紀…」
「その時に伝えたい言葉も、愛情も全部伝えてたからね。だからオレはしょーちゃんに対して感謝はあるけど未練はないよ」
滲む視界の中に映る雅紀の言葉に、何か言いたいのに返せないのは泣きそうになって詰まる喉のせいなんかじゃなくて
『ねぇ、しょーちゃんも偶には好きって言ってよ』
『はぁ?ンな小っ恥ずかしい事、言える訳ねぇだろ』
伝える事も出来ず寂しい顔をさせた〝 あの頃 〟が今になって後悔と未練になって苦しめるから。
「しょーちゃん、今までありがとう。元気でね」
そう言った雅紀の綺麗な笑顔が、余計に俺の未練を大きくして
酷く残酷だなと思った。
END
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突然の読み切りをぶち込んでみたよ(・∀・)ヘヘ
前に、いざ別れるってなったらスッパリいけるのは
翔くんより雅紀だなぁって話してた中で生まれたお話*
それに加えて最近またまたバンド熱が再燃してるからか
なんか薄ら暗いお話になったゃった( ◜௰◝ )
(V系ってほんと暗いの多いから仕方ないよねうん。笑)