櫻葉のお話。
BLなのでご注意ください。
ー Sside ー
〝 二番目でも良いなら 〟
その意味を理解した時、あんなに浮かれてた幸せ気分は一気に沈んだのに
それでも目の前の彼女に、もう触れれなくなる方が嫌だと思った
『…うん。二番目でもいい』
『本当?』
今ならバカだなと思うし、彼女に執着しなくても他に良い人が居るだろうって思えるけど
まだ恋愛にも未熟な子供だったから
それでも、子供なりに初めて本当に好きになった人だったから
『うん。だから俺の彼女になって』
腕の中に居る彼女をどうしても手離したくないと思ったんだ。
だけど、結局は公認上の二番目だから
『明日、空いてる?』
『明日は彼とデートだから無理かなぁ』
『あ…うん。そっか』
『また空いてる日言うね』
隠そうともしない他の男との予定も
『…あれ?何かぶつけたの?』
『え?』
『胸の所…紫の痣があるよ』
『あぁ…ふふっ。そっか、翔くん知らないんだ』
『へ?…いっ!』
『これはねキスマーク。ほら、翔くんの胸に紅く着いたでしょ?これがね時間が経つと紫になるんだよ』
『…え、って事はそれも…』
『うん!翔くんとお揃いだね』
彼女の肌に映える、俺意外が触れた〝 証 〟
無邪気に笑って彼女が言う『お揃い』
そんな残酷なお揃いは無いだろうと、下を向いて唇を噛むしかなかった。
彼女と会う度に苦しくなる胸と、虚しくなる関係に
何度も別れを切り出そうと思ったけど
『翔くん、大好きだよ』
俺を好きと言ってくれるなら
俺を抱き締めてくれるなら
会う時だけでも俺を見てくれるなら
何より、嫌いになれない想いから彼女と離れる事が出来なかったし
彼女が少しでも俺を想ってくれるならそれで良いと思ってた
そう思ってたのに、その日は訪れた
『え?』
『だから…もう翔くんとは会えない』
珍しい突然の呼び出しにのこのこ出て行くと
寒空の中、コートを羽織って俯いたままの彼女から出た言葉に驚くでもなく
あぁ…ついにか、なんて何処か冷めた気持ちの俺が居る
『…彼氏にバレた?』
『……うん』
『そっか…』
『…、彼氏がね、もう要らないって…』
『え?』
『一年も騙し続けてた女なんて信用出来ないから…もう別れよって言われたの』
『…うん』
『その時に私…最低だけど翔くんの事を全然思い出さなくて。寧ろ彼に捨てられる事が嫌で、みっともなくても何でもいいやって…必死に泣いて縋って…何とか許して貰えたの』
『…そ、っか……』
『…でね、私気付いたの。翔くんの一年を無駄にしてたんだって』
『……え?』
『この関係で良いって、本気じゃない事なんて解ってたのに翔くんの優しさに甘えてた。…酷い事して本当にごめんなさい』
そう言って頭を下げる彼女に込み上げるのは
悲しさでも、怒りでもなくて
ただただ、虚しさだけだった。
『…違うでしょ』
『え?』
『最初に彼氏居るって聞いてたのに、この関係を選んで続けてたのは俺なんだから甘えてたのはお互い様だよ』
『そんな事…』
『…だけど、この一年を無駄だって俺は思ってなかった。確かに…しんどいなとか、このままずっと二番目のままなのかなとか思ったけど…でも!付き合わなきゃ良かったなんて思った事は一回もなかった!!』
『翔くん…』
『ッ…無駄な一年を過ごしたと思ってるのは、俺じゃなくてそっちだろ』
滲む視界に、絶対に泣いてたまるかと眉間に力を入れて堪えて
こうなってもまだ、おめでたい俺は心のどこかで
『そんな事ないよ』
そう言ってくれると思ってた彼女からの言葉は
『っ…ごめ、なさい…』
この一年も俺の想いも否定する、心を抉るものだった。
つづく
✎︎____________
この翔くんのお話はまめの好きだったバンドマンの
実話から拝借したものでした( *¯ ꒳¯*)
先輩に告白したら『二番目でもいいならいいよ』
って言われてそのまま付き合って本命に昇格*
結局、バンドで上京する際にお別れするんですけど
後にこの彼女との事を曲としてリリースしました(・∀・)
その辺バンドマンよな〜〜と思ったり。すき(笑)
今回、翔くんは本命にもなれないままお別れしたけど♡笑
これからの恋に幸せが溢れてるといいなぁ♡(フラグか?)