イメージ 1

(「ホムセンで売ってるものかと」 ドミニカ人男性、中国の偉大な芸術家の作った壺を叩き割る)
http://matomechnews.blog.fc2.com/blog-entry-5600.html



ドミニカ人がマイアミにある美術館の展示作品のひとつで1億円の値がついている壺を
叩き割ってしまったという事件のニュースをやっていました。
このドミニカ人も画家だか美術家らしくこの美術館が外国人ばかりの展示なのに抗議を
したそう。
展示品を割ってはいかんですが
確かに実際に写真だけ見るとホムセンで売ってそうな壺なので何か笑えました。


ただ美術品の価値が分からずにやってしまったとか
と言えばそれまでですがちょっと違う角度から美術の本質を考えてしまう事件でした。

というのも美術の「価値」は名画を楽しむという分野ともうひとつの
顔としては現代の世界でも大金が動く、そこに
無い所から新たな価値を作り出す必要がある立派な「ビジネス」のひとつでもあるからです。
特にこの写真のような現代アートであれば尚更である意味で株や先物以上に相場を
作り出して価値を高めていくようなブランドビジネスのひとつという感覚が
あるかないかで見方も変わってきてしまう気がします。
中国の現代アートというと上海を中心に全盛期な気がしますが
(それでも毛沢東や共産党の絵が多いですが。。。)
こういう写真だけ見るとホムセンのツボでもおそらく我々が知らない所で中国で
何らかの権威が付けられているはずでそれがこういう莫大な価値を生み出しているのではと
想像します。
(お金=日本の円も単なる紙切れで本当は価値がないのですが「日本政府」の権威付けがされているから
今の所はお米とか家とかと「交換」ができるわけですが何かのはずみで
日本政府の財政の信頼=権威が無くなれば日本円の価値がなくなるのと似ている)


絵画や芸術の「価値」とはそもそもどういう歴史的なものを経てきたのか。
美術や芸術品の価値は不思議でかつてのルネサンス期の時代においても画家の最大のパトロンは
キリスト教会であったりしたわけで彼らのお墨付きを得た画家の絵はものすごい価値を
持ったりしたのです。
今年にスペインのプラド美術館を訪れたのですが初期フランドル派であったり、ゴシック、ロマネスク
美術でもキリスト教会にまつわる絵画が圧倒的に多かったですし
それもキリスト教会の権威によるお墨付きが与えられていたと想像します。

当時の画家はこの神や教会の絵を題材にしないとほとんど絵の価値を認めてもらえなかった
ことがうかがえます。
また一方で画家が生計を立てるためには「宮廷画家」という道もありました。王様貴族の
お抱えの画家になり、彼らの自画像を書いたりするのですが当時は写真がまだない時代
でしたのでこの宮廷画家の職を得た画家たちも相当の稼ぎを得ることができたし
ベラスケスやゴヤなど有名な宮廷画家の絵は今でも名画として残されています。

その後、時代は変わり新古典主義の時代でも「芸術アカデミー」が認めて権威を与えたものが
絵画としての価値を持っていくのですがやはり題材は神であったりするわけです。
それ以外にも歴史的な意義のある絵画も権威を持つのですが多くは政治的(特にナポレオンなどを
はじめとした欧州の戦争が盛んな時代でしたので)な大衆操作としての
役目も果たしたと理解しています。
これらに反する絵画はそもそも誰からの権威ももらえず価値を持たなかった時代だ。

そうしたものに反発して印象派という画家たちが生まれてくるのですが彼らゴッホ、
ゴーギャン、ルノワール、モネなどは
神や政治的、戦争の大衆操作以外の日常の絵画の価値を高める事に寄与するのですが
これはひとつのアカデミックな革命的な匂いのする運動だったように思えますが
一方では画家たちの「経済的な事情」とも十分に関係していたはずです。
当時は市民革命の時代でもありそこで多くの貴族、王族が没落していった時代とももちろん
関係してくるわけで彼らがいなくなれば当然宮廷画家として生計を立てていた人たちは
職を失うわけです。また宗教革命が起きていく時代でもありますし
そうなれば絵画の価値を神や王様の自画像に依存していくのは画家たちにとっても
「経済事情」としても
意味がなくなり絵画の価値そのものは違うポジションにもっていこうという
印象派の登場はある意味、経済的にも彼らにとって必要だったのではないかなと。

もちろん本質的に良い絵と言うのは時代を経ても価値は保つはずですがその裏に
見出されずに(権威やお墨付きをもらえずに=ビジネスとして
成り立たせることができずに)消えていった画家も相当いたのも事実です。
その違いは何かなと考えてしまいますしこの壺を割ったドミニカ人もそもそも
絵画や美術品には何故とてつもない価値がつくものがあるのかという
ビジネス的な視点を
考えていればこんなことしなかったのではと思ってしまいます。

現代アートが生まれて歴史と権威がある美術や名画の世界がビジネスの世界に
変わったいう批判を見たことがありましたがそういう人は一面的な美術の世界だけを
見ている気がします。
歴史的に見ても最初に西欧の世界でフランスやオーストリアの
王族たちは戦争から難を逃れるために自らの財産を
(重さが軽い)絵画に
変えて国境を渡りスイスなどの銀行に絵画(財産)を隠した歴史などがあったり
人類で最初のマネーロンダリングとして使われたのも西欧絵画でそのために
たくさんの貴族たちは絵画の価値を意識的に高める努力をしてきたにも事実だからです。


例えばピカソはキュビスムという独特な幾何学的な立体観の絵画が有名ですが彼が
キュビスムだけではなく通常の自画像や絵画を書かせても天才的な才能を持って
いたのは有名でバルセロナにあるピカソ美術館には彼が9歳で描いた絵なども
展示されているのですがそのレベルの高さは天才の域をはるかに超えていたりします。

ところがピカソが一方ですごかったのはそのビジネスセンスだったりするわけです。
彼がスペイン南部のマラガに生まれた時代はもう宮廷画家は存在してない時代です。
画家として生計を立てていくためには絵が上手いだけでは
ダメで通常とは違う「出世ルート」が必要だったのですが
ピカソはワインのラベルを無料で描いてお金の代わりに
ワインをもらう仕事をしていたり(そのワインの価値が上がれば自らの絵の価値も上がるから)
自らのサインを書いた小切手をわざわざ客の支払いに使い
絵の値段を釣り上げる努力をしたのですが
それも集団心理や絵画の価値の本質を理解していて絵の値段を少しでも高くする
努力したのは有名だ。
キュビスムという独特なアートを生み出す必要があったのも常に
新しいスタイルを生み出して価値を創出していこうとしたからと言われています。
(それが当初はなかなか時代に受け入れられずにキュビスムは嘲笑されてしまい、
大作「ゲルニカ」を書いたことでようやくキュビスムは花開いたのですが)


一方でこの絵画の価値の本質を理解して現代アートとしてビジネスが上手い中国人同様に
大きなポジションを確立しているのが村上隆氏だ。
ちょっと前に話題になりましたがヴェルサイユ宮殿で村上隆氏が
変わった河童のオブジェを置いたり、メイド服の女の人のフィギィアを置いたりする
展示をしたことで一部のフランスの愛国的団体非難を受けたりしていたのですが
それでも非難を受けている=大きな話題と知名度を作った時点で
村上氏としては大成功だったのかなと。
実際に同氏のサブカルチャー的なものやオタク文化的な美術品の価値が
30億とか値段がついています。
村上氏はこういう手法をピカソなどから学んだそうですが一方で神学や哲学にも
明るいそうですが確かにこういった学問への理解がないと絵画の本質も
つかみづらいのではと想像します。

もう大分昔の話ですが数年前にドミニカの客先から絵画を差し押さえた経験があります。
差し押さえたものの価値があるのかどの程度の値段なのか全く分かりませんでした。
インターネットで試しに売ってみましたが全然売れる気配がないです。
仕方なく絵画に詳しい方に相談して「価値があるのか全然分からない、実は売れないぐらい
価値がないのではないか」と相談しましたが其の方から
絵画は価値を作り出すんだよ、とアドバイスを受けてサントドミンゴの有名な絵画の店や
家具店(中南米の人は家に絵画を飾る人が多いので有名な家具店ではモダンな絵画もたくさん売られている)
に頼み置かせてもらったり絵画の枠斑を変えてシルバーの高級な素材に変えて
販売してみたら2000ドル近くで売れた絵画もありました。

その時にこの絵画や美術の不思議な世界を見た気がしましたが一方で
こういう「価値創出」の世界があるからこそ逆にそのようなものとは一線を置いた名画を
純粋に楽しむ世界観も自分の軸として持っておいた方が自分の中でバランスが保てるかなと
思ったりもしました。
どちらの世界も存在するというのを理解していた方が美術品をより深く楽しめると
思いますしこのドミニカ人のようなバランス感覚がない対応をせずに
すむのではと。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドミニカブログで知ろう!生のドミニカ共和国情報

<エントリー1>
ゆりいかドミニカ(JICAのサンチアゴ派遣教師として働くゆりいかさんのブログ)
http://ameblo.jp/yuriika923/

<エントリー2>
ドミニカ共和国の日々(ドミニカの旅行者のための情報が多い。換金のコツなど旅行前に要チェック)
http://chamoy.nobody.jp/

<エントリー3>
ドミニカ共和国 でたとこ通信♪(JICAの農業関係で働くmaboさんのブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/mabomabomabo123

<エントリー4>
カリブの国で同棲生活(ラテンブログで人気No.1.小説みたいな文才が光る)
http://ameblo.jp/zvz/

<エントリー5>
想いを馳せる(ドミニカを被写体にした写真の美しさは逸脱。必見のブログ)
http://rpt457581.exblog.jp/

<エントリー6>
ベンちゃんのドミニカ生活(看板や道端を走る車などを見た際のドミニカを見る視点が面白い)
http://bentian-dominica.cocolog-nifty.com/blog/

<エントリー7>
魅惑の島 ヒスパンニョーラ (ドミニカ南部やハイチ情報を知るならこのブログ)
http://hispaniola.blog44.fc2.com

<エントリー8>
”CIELITO LINDO”(ブログ)(ドミニカ情報満載のブログ)
http://plaza.rakuten.co.jp/chamoy/

<エントリー9>
”CIELITO LINDO”(HP)(ドミニカ情報を知るなら一押しのHP。情報力がすごい)
http://chamoy.nobody.jp/

<エントリー10>
TOMORROW ~ドミニカ便り~(JICAのサンチアゴの派遣教師の方のブログ)
http://kamucomech.exblog.jp/

<エントリー11>
MANANA ~ドミニカ便り2~(上と同じ方)
http://kamuchika.exblog.jp/

<エントリー12>
ここちんドミニカを歩く(コンスタンサの情報を知るならこのブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/samikotaka

※ エントリー募集中

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(株)リクルート / AB-ROADで
ドミニカ共和国、カリブ海のABガイドとして記事を書かせて
もらっています。
ブログでは書かれない観光情報等、内容が満載なのでぜひ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー